サントリー天然水 奥大山 完全ガイド——硬度20mg/L・日本最低水準の超軟水が生まれる大山国立公園の地質科学

硬度20mg/L、pH6.9。この数字は、サントリー天然水4採水地(南アルプス・北アルプス・阿蘇・奥大山)の中で最も軟らかいだけでなく、国内主要ペットボトル水のなかでも最低水準の値です。鳥取県・大山国立公園が育む「奥大山の天然水」は、なぜここまでミネラルが少ない超軟水になるのでしょうか。地質のメカニズムから南アルプスとの成分比較、コーヒーや出汁への活用まで徹底解説します。
奥大山とはどこ?——中国地方最高峰が育む天然水
奥大山(おくだいせん)は、鳥取県日野郡江府町に位置する大山国立公園内の深部エリアです。大山(だいせん)は標高1,729mの休火山で、中国地方の最高峰として知られています。
標高1,000m前後のブナ原生林に降った雨や雪解け水が、大山火山の噴出物である火山岩の層を地下約100mまでゆっくりと浸透します。この「火山岩深層地下水」がサントリー天然水 奥大山の水源です。採水・充填はサントリーが鳥取県内で行っており、西日本専用の採水地として関西・中国・四国地方を中心に流通しています。
なぜ硬度20mg/Lの超軟水になるのか——火山岩の地質科学
硬度(カルシウムとマグネシウムの量を示す指標)は、地下水が通過する岩石の種類によって大きく変わります。
岩石別ミネラル溶出量の違い
| 岩石の種類 | 代表的な産地 | 水の硬度傾向 |
|---|---|---|
| 石灰岩 | フランスアルプス(エビアン)、イタリア(クールマイヨール) | 硬水〜超硬水(300〜1,600mg/L) |
| 花崗岩 | 南アルプス(山梨)、北アルプス(長野) | 超軟水〜軟水(25〜40mg/L) |
| 火山岩(奥大山型) | 大山国立公園(鳥取) | 超軟水(20mg/L以下) |
| 火山岩(阿蘇型) | 阿蘇カルデラ(熊本) | 軟水(70〜90mg/L) |
大山の火山岩(安山岩・玄武岩質の噴出物)は、石灰岩や花崗岩に比べてカルシウムやマグネシウムがほぼ溶出しない岩質です。雨水や雪解け水が地下を浸透しても、ミネラルがほとんど水に溶け込まないため、硬度20mg/Lという数値になります。
奥大山では、豪雪地帯ならではの大量の冬季積雪が春に一気に溶け出して地下へ浸透することで、地下水の滞留時間が比較的短く保たれています。長時間岩石と接触しないことも、ミネラル蓄積をさらに抑える要因です。
なぜ阿蘇(火山岩)は硬度80mg/Lなのか
同じ「火山岩由来」でも、奥大山(20mg/L)と阿蘇(80mg/L)の差が大きいことを疑問に思う方もいるでしょう。
阿蘇はカルデラ内の広大な溶岩台地(玄武岩系)に雨水が何十年もかけてじっくりと浸透します。長い滞留時間のなかで少しずつミネラルが溶出し、豊かな成分の地下水が育まれます。一方、奥大山は急峻な火山斜面を流れるため浸透速度が速く、岩石との接触時間が短いことがミネラルの少なさにつながっています。
pH6.9の弱酸性——大山特有の微量火山性炭酸ガス
奥大山のpHは6.9でわずかに弱酸性です。大山火山帯の地下で生じる微量の火山性炭酸ガスが地下水に溶け込むためと考えられています。同じサントリー天然水の南アルプス(pH7.1)や阿蘇(pH7.3)より低めのpHが、すっきりした後味の要因の一つとなっています。
成分データ——サントリー4採水地を並べて比較

| 採水地 | 硬度(mg/L) | pH | Ca(mg/L) | Mg(mg/L) | Na(mg/L) | 水源の地質 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 奥大山(鳥取) | 20 | 6.9 | 4.8 | 1.8 | 3.2 | 火山岩(急斜面浸透) |
| 南アルプス(山梨) | 30 | 7.1 | 9.7 | 1.5 | 1.8 | 花崗岩深層地下水 |
| 北アルプス(長野) | 38 | 7.1 | 7.2 | 2.8 | 2.5 | 花崗岩深層地下水 |
| 阿蘇(熊本) | 80 | 7.3 | 22.0 | 6.5 | 4.3 | 溶岩台地長期滞留 |
奥大山のカルシウム4.8mg/Lは南アルプスの約半分、阿蘇の約5分の1です。この数値が「透明感のある飲み口」の正体です。
奥大山 vs 南アルプス——同じ「超軟水」でも味は異なる
硬度20mg/Lの奥大山と硬度30mg/Lの南アルプス。差は10mg/Lですが、飲み口の印象は異なります。
- 奥大山: 雑味がほぼゼロのピュアな口当たり。後味が残らず、何杯飲んでも飽きにくい
- 南アルプス: カルシウム9.7mg/Lが作る微妙な丸みとまろやかさがあり、水そのものの「味」をほんのり感じる
南アルプスがよく「まろやか」と表現されるのは、カルシウムが生み出す微細な甘みが影響しています。奥大山はそのカルシウムが半分以下であるため、より透明感が際立つ飲み口になるというわけです。
奥大山が輝く3つの使い方

1. ドリップコーヒーへの最適解
コーヒーの抽出において、水の硬度は味の大きな決め手です。軟水(特に硬度20mg/L台)はコーヒー豆の酸味・甘みを素直に引き出し、豆本来のフレーバーを邪魔しない特性があります。
スペシャルティコーヒーをペーパードリップやフレンチプレスで楽しむ方には、奥大山の「余計なミネラルを持ち込まない」特性が際立ちます。ミネラルが少ないほど水の「介入」が小さく、豆の個性をダイレクトに味わえます。
2. 繊細な出汁・和食
昆布やかつおの出汁は、ミネラルが少ない軟水のほうがうま味成分(グルタミン酸・イノシン酸)の抽出効率が高まるとされています。奥大山はナトリウム3.2mg/Lも低値で、素材の風味をストレートに活かす調理水として理想的です。
3. 赤ちゃんのミルク調乳
粉ミルクの調乳に軟水が使われるのは、粉ミルクがミネラル組成を設計した上で作られており、硬水で溶かすと設計値に水由来のミネラルが上乗せされるためです。奥大山は硬度20mg/L、Na 3.2mg/L・K 0.8mg/L と低く、粉ミルクの組成をほとんど動かしません。
なお「WHO が調乳に軟水(硬度60mg/L以下)を推奨している」という説明が広く流通していますが、そのような基準は存在しません。FAO/WHO のガイドライン(厚生労働省が翻訳を採用)が定めているのは 70℃以上の湯で調乳し2時間以内に飲むことと、使用する水を「水道水」「水質基準を満たす井戸水」「乳児用調乳に推奨される市販の容器入り水」から選ぶことで、硬度の数値基準は示されていません。ガイドラインの主眼は微生物リスクの管理にあります。
調乳に使う水の選択は、まず煮沸と温度の問題です。硬度は次の考慮事項にすぎません。
こんな方に向いている・向いていない
奥大山が特におすすめの方
- ドリップコーヒーや緑茶の風味にこだわっている
- 「水の余韻」を感じずにゴクゴク飲みたい
- 繊細な和食の出汁をとる
- 赤ちゃんのミルク調乳用の水を探している
- 関西・中国・四国地方在住でスーパーで手軽に入手したい
他の採水地を検討したほうがよい場合
- ミネラル補給を水から意識したい(→ 阿蘇80mg/Lまたは北アルプス38mg/Lが候補)
- ほんのりとした「水の甘み」を楽しみたい(→ 南アルプス30mg/Lが候補)
- マグネシウムを多めに含む水を選びたい(→ 硬水系のミネラル含有量が高め)
まとめ——超軟水の到達点、西日本の火山が育む
サントリー天然水 奥大山の最大の個性は「引き算の美学」にあります。大山火山岩が余分なミネラルを与えず、雪解け水が急斜面を駆け下りるように地下を浸透することで生まれる硬度20mg/Lは、国内主要ブランドの中でも特筆すべき軟らかさです。
コーヒーや出汁の邪魔をせず、赤ちゃんにも安心して使えるピュアな超軟水——それが奥大山の天然水の本質です。東日本での流通は限られますが、MIZUNOMOでは奥大山を含むサントリー全採水地の成分データを比較できます。ぜひデータベースで4採水地を並べてみてください。
参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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