阿蘇の天然水完全ガイド——サントリー天然水(阿蘇)vs い・ろ・は・す阿蘇、硬度・成分・採水地を科学で比較

「阿蘇の天然水」と名乗る商品が複数あるのをご存じですか? 国内でも屈指の知名度を誇るサントリー天然水(阿蘇)とい・ろ・は・す(阿蘇)は、同じ熊本県・阿蘇地域を採水地としながら、硬度・ミネラルバランス・pHが明確に異なります。「同じ阿蘇から汲んでいるはずなのに、なぜ成分が違う?」——その答えは採水地点の地質構造にあります。
本記事では、阿蘇カルデラの地質科学をベースに、2商品の成分データを徹底的に比較します。
阿蘇カルデラとは?——世界有数の大地が水を育む
熊本県の中央に位置する阿蘇山は、世界でも屈指の規模を誇るカルデラを持つ活火山です。約9万年前の大噴火で形成されたカルデラは東西18km・南北25kmに及び、カルデラ底には現在も5つの火山(中岳・高岳・根子岳・烏帽子岳・杵島岳)が連なります。
このカルデラ地形が、2商品の原水となる地下水の性質を決定しています。
火山地質が水にミネラルを溶かし込む仕組み
阿蘇地域に降った雨水は、火山灰や溶岩・火砕流堆積物が何万年にもわたって積み重なった地層をゆっくりと浸透します。この過程で、地層に含まれる火山性鉱物(カルシウム系鉱物・マグネシウム系輝石類・長石類)が少しずつ溶出し、特有のミネラルバランスを持つ地下水が形成されます。
日本の火山性地下水は欧州の石灰岩地帯に比べて軟水系が多いですが、阿蘇は厚い火山灰堆積層と長い浸透経路の相乗効果で、国産天然水のなかでは比較的ミネラルが豊富な水を生み出します。
採水地の違いが成分を分ける
2商品は同じ「阿蘇」を冠しながら、採水地点が異なります。
| サントリー天然水(阿蘇) | い・ろ・は・す(阿蘇) | |
|---|---|---|
| 採水地 | 阿蘇カルデラ内部(地下約100m) | 阿蘇外輪山(カルデラ外縁部の地下水) |
| 地質の特徴 | カルデラ内の火山灰・溶岩が主体 | 外輪山の傾斜地から浸透する地下水 |
カルデラ内部と外輪山では、接触する岩石の種類・地下水の滞留時間・圧力が異なるため、溶け込むミネラルの種類や量に差が生まれます。
成分データ徹底比較

| 成分 | サントリー天然水(阿蘇) | い・ろ・は・す(阿蘇) |
|---|---|---|
| 硬度 | 80mg/L | 71mg/L |
| pH | 7.3 | 7.0 |
| カルシウム(Ca) | 22mg/L | 12mg/L |
| マグネシウム(Mg) | 6.5mg/L | 10mg/L |
| ナトリウム(Na) | 11mg/L | 27mg/L |
| カリウム(K) | 3.3mg/L | 7.0mg/L |
硬度の読み方
硬度はカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)の濃度から算出される指標です。以下の式で求められます。
硬度(mg/L)= Ca(mg/L)×2.497 + Mg(mg/L)×4.118
この式で検算すると、サントリー阿蘇(22×2.497 + 6.5×4.118 ≒ 81.7)もい・ろ・は・す阿蘇(12×2.497 + 10×4.118 ≒ 71.1)もデータベースの表示値と一致しており、数値の整合性が確認できます。
日本では日本ミネラルウォーター協会の分類基準で100mg/L未満を「軟水」と呼ぶことが多く、両商品はいずれもこの軟水の範囲内に位置します。
カルシウムとマグネシウムの内訳を見る
注目すべきはCaとMgの比率です。
- サントリー天然水(阿蘇): Ca 22mg/L・Mg 6.5mg/L → Ca/Mg比 ≒ 3.4
- い・ろ・は・す(阿蘇): Ca 12mg/L・Mg 10mg/L → Ca/Mg比 ≒ 1.2
Ca/Mg比が高い(サントリー阿蘇)ほどカルシウム主体の水、低い(い・ろ・は・す阿蘇)ほどマグネシウムの割合が相対的に多い水といえます。
ナトリウムの違いに注目
い・ろ・は・す(阿蘇)のナトリウムは 27mg/L で、サントリー天然水(阿蘇)の11mg/Lの約2.5倍です。外輪山の地下水は、カルデラ外縁の地層を経由する際にナトリウム系鉱物との接触時間が長くなることが一因と考えられています。
なお、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上男性のナトリウム目標量を食塩相当量7.5g/日未満と定めています。両商品のナトリウム値(11〜27mg/L)は、1Lあたりで換算しても目標量の1%未満に相当するため、日常的な水分補給における影響は極めて小さいことが数値から読み取れます。
カルシウム・マグネシウムの寄与率(1L換算)
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づき、1L摂取した場合の1日推奨量に対する寄与率を示します。
| サントリー天然水(阿蘇) | い・ろ・は・す(阿蘇) | |
|---|---|---|
| Ca(18〜29歳男性推奨量800mg/日) | 22mg → 2.8% | 12mg → 1.5% |
| Mg(18〜29歳男性推奨量340mg/日) | 6.5mg → 1.9% | 10mg → 2.9% |
出典: 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
1Lの天然水で推奨量を満たすことは難しい数字ですが、食事からの摂取と組み合わせることで毎日の積み上げとなります。
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サントリー天然水(阿蘇)
い・ろ・は・す(阿蘇)
飲み方・用途の違い——成分データからの考察

水の成分は飲み口や用途に影響を与えます。科学的な一般論として参考にしてください。
硬水・軟水と出汁の関係
出汁を引く場合、カルシウムや硬度が高い水は昆布のグルタミン酸と結合してうまみの抽出を一部抑制することが調理科学では知られています。両商品はいずれも軟水域(100mg/L未満)ですが、より低硬度の水(例: 南アルプス産・硬度30mg/L前後)と比べると、出汁の抽出特性に若干の違いが出る可能性があります。
飲み口の傾向
一般的な傾向として:
- pH 7.3(サントリー阿蘇): 弱アルカリ寄りでまろやかな口当たり
- pH 7.0(い・ろ・は・す阿蘇): 中性でさっぱりとした飲み口
ただし、味の感じ方には個人差があります。ミネラル量・温度・飲む量によっても印象は変わるため、データはあくまで比較の参考としてご活用ください。
サントリー天然水4採水地との硬度比較
サントリー天然水は阿蘇のほか、南アルプス・奥大山・北アルプスの計4採水地で展開しています。硬度を並べると阿蘇産の特徴が際立ちます。
| 採水地 | 硬度(mg/L)の目安 |
|---|---|
| 奥大山(鳥取県) | 約20mg/L |
| 南アルプス(山梨県) | 約30mg/L |
| 北アルプス(長野県) | 約27mg/L |
| 阿蘇(熊本県) | 約80mg/L |
阿蘇産の硬度は他の3採水地の2.5〜4倍にのぼります。火山灰が厚く堆積した阿蘇カルデラの地質が、サントリー天然水ラインナップの中で際立ったミネラル感を生み出していることが分かります。
まとめ——「同じ阿蘇」でも成分は別物
- サントリー天然水(阿蘇): 硬度80mg/L・pH7.3。カルシウム主体(Ca/Mg比3.4)で、阿蘇カルデラ内部の地下100mから採水
- い・ろ・は・す(阿蘇): 硬度71mg/L・pH7.0。マグネシウムの割合が相対的に高く(Ca/Mg比1.2)、外輪山からの地下水でナトリウムも多め
「阿蘇産だから同じ」ではなく、採水地点の地質・深度・浸透経路によって成分は変わります。MIZUNOMOでは両商品のNONDA記録(飲んだ記録)や科学データを継続的に更新しています。九州産・熊本県産の天然水を探す場合は、データベースのフィルタ機能をご活用ください。
参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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