カルシウム:マグネシウム比2:1——ペットボトル水が骨と心臓に届けるミネラルバランスの科学
ペットボトルのラベルには「カルシウム○○mg/L・マグネシウム○○mg/L」と並んで記載されていますが、両者の「比率」まで意識したことはあるでしょうか?実は、カルシウムとマグネシウムは個々の量だけでなく、二つのバランスが体内での吸収バランスや水の口当たりを大きく左右します。

ミネラルウォーターのCa/Mg比を理解すると、毎日飲む水の選び方がぐっと変わります。
なぜ「比率」が量と同じくらい重要なのか
体内では、カルシウムとマグネシウムはそれぞれ独立して働くのではなく、常に拮抗・協調しながら機能しています。
マグネシウムはカルシウムの「番人」
筋肉細胞の中では、カルシウムが細胞内に流入すると筋肉が収縮し、マグネシウムがそれを押し出すことで筋肉が弛緩します。マグネシウムが不足するとカルシウムが細胞内に留まり続け、筋肉のけいれんやこむら返りが起きやすくなる一因になります。
骨形成とカルシウム吸収のサポート
体内のマグネシウムの50〜60%は骨や歯に存在しています。マグネシウムは副甲状腺ホルモンの分泌を調節し、ビタミンDを活性化することでカルシウムの腸管吸収を間接的に促進します。「カルシウムをたくさん摂っても、マグネシウムが足りないと骨密度が上がりにくい」という現象はこのメカニズムから来ています。
理想の摂取比率は2:1
栄養医学の世界では、カルシウム:マグネシウムの摂取比率は 2:1 が理想とされています。体内の血液中でもこの比率が維持されており、崩れるとさまざまな生理機能に影響が出ます。日本人は平均的にカルシウムが不足し、マグネシウムはさらに不足しやすいため、この比率が乱れやすい状態にあります。
ペットボトル水のCa/Mg比を銘柄別に見る
水のCa/Mg比は、採水地の地質によって大きく変わります。代表的なブランドの数値を比較してみましょう。
| ブランド | Ca(mg/L) | Mg(mg/L) | Ca/Mg比 |
|---|---|---|---|
| サントリー天然水(南アルプス) | 約7.9 | 約2.7 | 約2.9:1 |
| い・ろ・は・す(阿蘇) | 約6.4 | 約1.8 | 約3.6:1 |
| ヴォルヴィック(フランス) | 約11.5 | 約8.0 | 約1.4:1 |
| エビアン(フランス) | 約78 | 約24 | 約3.3:1 |
| コントレックス(フランス) | 約468 | 約74 | 約6.3:1 |
| フィジーウォーター(フィジー) | 約18 | 約15 | 約1.2:1 |
日本の代表的な軟水(サントリー天然水・い・ろ・は・す)は、Ca/Mg比は理想に近いものの絶対量が少ない点が特徴です。欧州の硬水のうちエビアンは比率のバランスが比較的整っている一方、コントレックスはCaが突出して高く比率が崩れています。フィジーウォーターやヴォルヴィックは比率が1:1に近く、Mgの存在感が際立ちます。
水の「口当たり」を決めるミネラルバランス

Ca/Mg比は健康だけでなく、水の「味」にも直接影響します。
カルシウムが高い水:まろやかで「重み」のある口当たり。コントレックスやエビアンがこれに該当します。煮沸すると白い浮遊物(炭酸カルシウム)が出やすいのも特徴です。
マグネシウムが高い水:微妙な苦みが現れることがあります。Mgが70mg/Lを超えると苦みを感じる人が増えるとされており、海洋深層水由来のMg50mg/L前後の水では感じる場合があります。ヴォルヴィック(Mg約8mg/L)はほぼ気になりません。
両方が低い日本の軟水:ほぼ無味に近く、「水らしい水」として日本人に馴染みやすい口当たりです。食材の味を邪魔しないため、料理用にも最適です。
水道技術研究センターが示す「おいしい水の条件」にも「カルシウム10〜100mg/L・マグネシウム10mg/L以下」という範囲が含まれています。日本の天然水の多くはCa・Mgともにこの下限付近に位置し、日本人が「水は無味に近いほど良い」と感じる文化的背景とも一致しています。
日本人はマグネシウムが不足しやすい
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、マグネシウムの推奨量は成人男性で340〜370mg/日、成人女性で280〜290mg/日です。しかし国民健康・栄養調査では、多くの年代でこの推奨量を下回っています。
現代の精白食品中心の食生活では、ナッツ類・豆類・海藻・玄米といったMgの主要供給源が不足しがちです。これは「現代型マグネシウム欠乏」とも呼ばれています。
水からの補給量の試算(2L/日飲んだ場合)
- サントリー天然水:約5.4mg(推奨量の約2%)
- ヴォルヴィック:約16mg(約6%)
- エビアン:約48mg(約17%)
- コントレックス:約148mg(約48%)
コントレックスなどの高硬度水は水からのMg補給源として機能しますが、Mgが多すぎると軟便になる場合もあります(マグネシウムは便秘薬にも使われる成分です)。毎日飲む水としては、MgとCaのバランスが取れた中程度のミネラル量の水が扱いやすいでしょう。
骨と心臓を守る選び方の実践ガイド

カルシウム・マグネシウムの摂取量を意識する方へ
カルシウムとマグネシウムをバランス良く補いたいなら、Ca/Mg比が2:1〜3:1程度のブランドが選びやすい選択肢です。エビアン(Ca約78mg/L・Mg約24mg/L・比率約3.3:1)は両ミネラルを同時に含む代表例です。ただし水1Lが供給する量は食事摂取基準の推奨量の数%にとどまるため、国産軟水を含めミネラル摂取の中心は食事であることを前提に、水は補助的に捉えるのが現実的です。
マグネシウム摂取と循環器に関する研究
国立がん研究センターと国立循環器病研究センターによる多目的コホート研究(約8.5万人対象)では、食事からのマグネシウム摂取量が多い群で虚血性心疾患の発症リスクが低い傾向が報告されています。これは食事全体からのマグネシウム摂取と疾病リスクの関連を観察した研究であり、特定の水の摂取を検証したものではありません。ペットボトル水由来のマグネシウムがこの摂取量に占める割合はごく小さいものの、Mgを比較的多く含む水は日々の摂取源の一つになり得ます。
料理・赤ちゃんのミルク作りに
Ca・Mgともに低い国産軟水が最適です。ミネラルが少ないほど素材の味が引き立ち、粉ミルクの溶けやすさにも優れています。
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参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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