pH6.2〜9.9——ペットボトル水の「酸性・アルカリ性」表示を科学で読み解く

「アルカリ性の水を飲むと体がアルカリ性になる」——SNSやウォーターサーバーの広告でよく見かけるこの主張、実は医学的に正確ではありません。ペットボトル水のpH値とは何を示し、健康や味にどんな影響があるのか。MIZUNOMOに掲載された40種以上の水のデータとともに、科学的に徹底解説します。
そもそも「pH」とは何か
pHとは水溶液中の水素イオン濃度を表す指標で、0〜14のスケールで示されます。
- pH7.0 = 中性(純水)
- pH7未満 = 酸性
- pH7超 = アルカリ性(塩基性)
例えば、レモン果汁はpH約2(強酸性)、重曹水はpH8〜9(弱アルカリ性)です。数値が1変わるごとに水素イオン濃度が10倍変化するため、pH3とpH4の酸性度の差は実に10倍にもなります。
日本の水道水には厚生労働省の基準によりpH5.8〜8.6という範囲が設けられています。市販のペットボトル水は一般的にこの範囲内に収まっており、MIZUNOMOに掲載された銘柄ではpH6.2〜9.9というレンジが確認できます。
日本の天然水はなぜ「中性〜弱アルカリ性」に集まるのか
ミネラルウォーターのpHは、採水地の地質と水が通過してきた地層の組成によって大きく左右されます。
軟水(国産天然水)の場合
い・ろ・は・す(pH約7.0前後)、サントリー天然水 南アルプス(同pH約7.2)など、花こう岩や変成岩を主体とする日本の地層を通った水は、ミネラル成分が溶け込みにくくpHも中性に近くなります。地下浸透の過程で土壌の二酸化炭素(CO₂)が溶け込むと弱酸性に傾くこともあります。
硬水(外国産・一部国産)の場合
石灰岩(炭酸カルシウム)地帯を長時間かけて通った水は、カルシウムやマグネシウムの炭酸塩が「緩衝剤(バッファー)」として働き、pHを弱アルカリ性に安定させます。コントレックス(硬度1468mg/L、pH7.4)、エビアン(硬度304mg/L、pH7.2)がその典型です。
特別な例:温泉水系の強アルカリ天然水
鹿児島県垂水市の「温泉水99」(pH9.9)のように、火山性地層に由来するナトリウム成分が豊富に溶け込んだ水は、自然の状態で強いアルカリ性を示します。ナトリウム濃度が高いため、塩分制限中の方は成分表示の確認が必要です。

「アルカリ水を飲むと体がアルカリ性になる」——医学的な答え
結論から言えば、健康な人が飲料水のpHによって血液のpHを変えることはほぼできません。
人間の血液はpH7.35〜7.45という非常に狭い範囲に精密に自動維持されています。これを担うのが体内の「緩衝系(バッファー系)」です。
| 緩衝系 | 主な働き |
|---|---|
| 重炭酸塩緩衝系 | 肺がCO₂量を調整して数秒〜数分でpHを補正 |
| リン酸緩衝系 | 腎臓が数時間〜数日かけてpHを微調整 |
| タンパク質緩衝系 | 血中タンパクが水素イオンを吸着・放出 |
これらの精密な調節機構により、pH8の水を飲んでも血液のpHは動きません。仮に血液のpHが7.35を下回るとアシドーシス(酸性血症)、7.45を超えるとアルカローシス(アルカリ血症)という重篤な病態になり、いずれも医療処置が必要な状態です。
豆知識:胃酸はpH1〜2(強酸性)。pH8程度のアルカリ水を飲んでも、胃に入った瞬間に胃酸で中和されます。腸に到達するころにはpHの影響はほぼ消えています。
アルカリイオン水 vs 天然アルカリ水——根本的な違い
市場で「アルカリ」を謳う水には、製法が全く異なる2種類があります。混同している人が多いため、整理しておきましょう。
| アルカリイオン水 | アルカリ天然水 | |
|---|---|---|
| 別称 | 電解水素水 | ナチュラルミネラルウォーター(アルカリ性) |
| 製法 | 水道水を電気分解して人工的に生成 | 地層を通る過程で自然にアルカリ性に |
| pH調整 | 設定で変更可能(7.5〜10程度) | 地質依存(7.5〜9.9程度) |
| 法的位置付け | 医療機器(薬機法管轄) | 食品(食品衛生法管轄) |
| 公認された効果 | 慢性下痢・消化不良・胃腸内異常発酵・制酸・胃酸過多の改善(消費者庁告示) | 特定の医療効果の表示は原則不可 |
重要なポイント:アルカリイオン水(電解水素水)は薬機法上の「医療機器」に分類され、胃腸症状への効果が公的に認可されています。しかしこれは電気分解で生成した機能水の話であり、天然のアルカリ性ミネラルウォーターに同様の認可はありません。「天然アルカリ水だから胃腸に効く」という広告表現は、法的には根拠のない誇大表示になるため注意が必要です。
pHは「おいしさ」にどう影響するか
実は、pHは水の味わいにも関係しています。
- pH低め(弱酸性寄り):炭酸ガスが溶けやすく、スッキリ・さわやかな口当たりになりやすい。国産軟水に多いタイプです。
- pH高め(弱アルカリ性):わずかに「まろやか」「甘み」を感じると表現されることがあります(個人差大)。
- 炭酸水はpH4〜5:CO₂が溶け込んで炭酸(H₂CO₃)が生じるためです。炭酸水の長期的な過剰摂取と歯のエナメル質への影響については、継続的な研究が行われています。
MIZUNOMOのNONDA記録でも、自分が「おいしい」と評価した水のpHを見比べると、好みのパターンが浮かび上がってくるかもしれません。

MIZUNOMOのデータでpH帯別に選ぶ
MIZUNOMOでは40種以上の天然水のpH値を掲載しています。水を選ぶ際の参考に、pH帯別の傾向をまとめます。
| pH帯 | 典型的な特徴 | 向いている飲み方 |
|---|---|---|
| 6.0〜6.9(弱酸性) | スッキリ、軽い炭酸感に近い | 食事中、運動後のリフレッシュ |
| 7.0〜7.9(中性〜弱アルカリ) | もっとも一般的、どんなシーンにも合う | 日常の水分補給、料理用 |
| 8.0〜8.9(弱アルカリ) | まろやか、ミネラル感がある | ゆっくり味わいたい時、就寝前 |
| 9.0以上(アルカリ性) | 独特の舌触り、慣れが必要 | 試してみたい方の探求用 |
なお、いくつかの重要な注意点があります。腎機能が低下している方は高ミネラルの水(強アルカリ水に多い高ナトリウム・高カリウム)を日常的に大量摂取することは避け、医師に相談することをおすすめします。
まとめ
- ペットボトル水のpHは採水地の地質が決める。日本の天然水は概ねpH6.5〜8.0に集中。
- 飲料水のpHで血液のpHは変わらない——体の緩衝系が精密に7.35〜7.45を維持しているため。
- 「アルカリイオン水」(電解)と「アルカリ天然水」(自然)は根本的に別物。胃腸症状改善の公的認可があるのは前者のみ。
- pHは水の「味」の一因。スッキリ系が好きなら低め、まろやか系が好きなら高めを選ぶ手がかりになる。
- MIZUNOMOのpHデータと自分のNONDA記録を組み合わせれば、科学的な視点で「自分好みの水」を探せます。
参考資料
- 厚生労働省「水質基準に関する省令」(水道水pH基準: 5.8〜8.6): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/index.html
- 日本トリム「アルカリイオン水(電解水素水)とは?効果・効能や適切な飲み方を徹底解説」: https://www.nihon-trim.co.jp/media/31842/
- クリンスイ「アルカリイオン水とは?効果と正しい飲み方を知ろう」: https://brand.cleansui.com/journal/4287.html
- プレミアムウォーター「水道水のpHはアルカリ性?酸性?pH基準値の基礎知識も解説」: https://premium-water.net/feature/tapwater-ph/
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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