白湯に合う水——軟水が白湯向きな理由と国産天然水の硬度比較
秋が深まると白湯を習慣にしたいと考える方が増えます。白湯は水をいったん沸騰させてから50〜60℃程度に冷ましたものですが、使う水の硬度によって仕上がりの透明感やケトルへのスケール(水垢)付着しやすさが大きく変わります。
MIZUNOMOのデータベースに収録した天然水の成分データをもとに、白湯に向く水の選び方を化学的な観点から解説します。

白湯をつくるときに起きていること——炭酸カルシウムの析出
硬水を加熱すると、やや白く濁ることがあります。これは水中に含まれる炭酸水素カルシウム(Ca(HCO₃)₂)が熱によって分解されるためです。
加熱分解反応
Ca(HCO₃)₂ → CaCO₃↓ + H₂O + CO₂↑
炭酸カルシウム(CaCO₃)は水に溶けにくい性質を持ちます。加熱によって二酸化炭素が逃げると同時に不溶性の炭酸カルシウムが生成し、水が白濁します。ケトル内側に「水垢」がつくのも、この析出物が蒸発後に残留するためです。
逆に言えば、カルシウムやマグネシウムが少ない軟水ではこの反応が小さく抑えられ、加熱しても透明感を維持しやすくなります。
硬度の分類と、加熱したときの一般的な傾向
硬度はWHO(世界保健機関)の「Guidelines for Drinking-water Quality 第4版(2011年)」に基づいて次のように分類されます。
| 硬度(mg/L) | WHO分類 |
|---|---|
| 60未満 | 軟水 |
| 60〜120 | 中程度 |
| 120〜180 | 硬水 |
| 180超 | 非常に硬い |
炭酸カルシウムの析出量はカルシウム・マグネシウムの含有量が多いほど増える傾向があり、一般的にWHO分類で軟水(60mg/L未満)に相当するミネラルウォーターのほうが加熱時の透明感を維持しやすくなります。
なお硬度は「Ca(mg/L)×2.497 + Mg(mg/L)×4.118」で計算されます。同じ硬度でもカルシウムが多い水ほど析出の影響が出やすくなる点に注意が必要です。
国産天然水の硬度比較
MIZUNOMOデータベースに収録している国産天然水のうち、硬度の低いものを順に並べました。
| ブランド | 採水地 | 硬度(mg/L) | Ca(mg/L) | Mg(mg/L) | pH |
|---|---|---|---|---|---|
| 安曇野の自然が育んだ天然水 | 長野県・安曇野 | 14 | 5.0 | 0.4 | 6.9 |
| 新潟県津南の天然水 | 新潟県・津南 | 17 | 5.0 | 1.0 | 7.0 |
| サントリー天然水(奥大山) | 鳥取県・奥大山 | 20 | 4.8 | 1.8 | 6.9 |
| サントリー天然水(南アルプス) | 山梨県・南アルプス | 30 | 9.7 | 1.5 | 7.1 |
| おいしい水 富士山 | 静岡県・富士山 | 30 | 9.0 | 3.0 | 8.0 |
表中の上位3商品は硬度20mg/L以下の超軟水です。
編集部が選んだ3商品
ここからはMIZUNOMO編集部の選定です。上の比較表の軟水5銘柄から、成分の特徴と全国での入手しやすさを考慮して3商品を取り上げます。硬度の低い順に3つ選んだわけではなく、カルシウムが最も少ないもの、マグネシウムが最も少ないもの、入手しやすいものという3つの軸です。白湯の仕上がりを保証するものではありません。
サントリー天然水(奥大山)——硬度20mg/Lの国産超軟水
鳥取県大山国立公園の深層地下水を採水。花崗岩層を長期間かけてろ過することで硬度20mg/L・pH6.9の超軟水が生まれます。カルシウム4.8mg/L・マグネシウム1.8mg/Lで、上の比較表ではカルシウムが5商品中もっとも少ない水です(硬度は3番目に低い20mg/L)。
おいしい水 富士山——pH8.0のアルカリ軟水
静岡県富士山の溶岩層で自然ろ過された水。硬度30mg/Lの軟水でpH8.0と弱アルカリ性を示します。MIZUNOMOデータベース採用の代表値はカルシウム9.0mg/L・マグネシウム3.0mg/Lです。表中の5商品ではマグネシウムがもっとも多く、カルシウムは南アルプス(9.7mg/L)に次ぐ2番目。硬度は南アルプスと同じ30mg/Lです。コンビニ・スーパーで広く入手できます。
安曇野の自然が育んだ天然水——硬度14mg/Lの超軟水
長野県・安曇野の北アルプス伏流水。硬度14mg/LはMIZUNOMOデータベース収録の国産天然水の中でも最低水準の超軟水です。カルシウム5.0mg/L・マグネシウム0.4mg/Lで、表中の5商品のうちマグネシウムが最も少ない水です。

硬水を白湯に使うと?
エビアン(硬度304mg/L)やコントレックス(硬度1468mg/L)のような硬水を加熱すると、炭酸水素カルシウムの含有量が多いほど白濁が出やすく、ケトルへの水垢付着も早くなる傾向があります。加熱後に白い浮遊物が見られることもあります。
なお、析出した炭酸カルシウム自体は人体に有害な物質ではありません。「仕上がりの見た目」や「ケトルのメンテナンスのしやすさ」という観点から、軟水が選ばれやすいということです。
水選びのポイントまとめ
白湯用の水を選ぶときのポイントを整理します。
- カルシウム・マグネシウムが少ない軟水(硬度60mg/L未満)ほど加熱時の析出が抑えられる傾向がある
- カルシウム含有量が少ないほど析出が少ない傾向がある
- 上の比較表に挙げた国産5商品はいずれも硬度14〜30mg/Lで、WHO分類の軟水(60mg/L未満)に収まる
- フランス産硬水(エビアン・コントレックスなど)は軟水に比べて白濁が出やすい傾向がある
白湯に向く超軟水の一覧はMIZUNOMO 軟水ランキング(硬度の低い順)でご確認いただけます。
参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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