日本茶・緑茶に合う水——硬度と抽出の関係を成分データで徹底検証

日本茶のおいしさは、茶葉だけで決まるわけではありません。同じ煎茶でも、使う水によって色・香り・うまみ・渋みが大きく変わります。茶道や専門店が「軟水を使うべき」と推奨する背景には、水の硬度・ミネラル含有量が関係しているとされています。
この記事では、硬度・pH・Ca・Mgの成分データをもとに日本茶向きの水を解説し、MIZUNOMOのデータベースから入手しやすい国産軟水を紹介します。
なぜ軟水で緑茶がおいしくなるのか——産地と専門店が推奨する理由
緑茶の渋みとコクのもとはカテキン(ポリフェノール)です。お湯に溶け出したカテキンが口の中で作用することで、独特の渋みとさわやかな後味が生まれます。
硬水で淹れた緑茶に白い沈殿が生じることは、研究で原因物質まで特定されています。農林水産省野菜・茶業試験場の堀江秀樹らは、緑茶の硬水浸出液に生じる白色沈殿を 13C-NMR で分析し、シュウ酸カルシウムと同定しました(日本食品科学工学会誌 45(6) 364-367, 1998)。茶に含まれるシュウ酸が、硬水のカルシウムと結びついて沈殿するという経路です。
ただしこの報告が示しているのはカルシウムによる白色沈殿の生成までで、マグネシウムの関与や「味が薄くなる」機序は同論文の対象ではありません。
ポイント: 科学的に原因が特定されているのは「硬水で白い沈殿(シュウ酸カルシウム)が生じる」ことまでです。「軟水を使うと茶本来の色・香りが出やすい」は産地やお茶の専門店で広く語られる経験則で、本記事では科学的に確認された事実とは分けて扱います。
pH が茶の色に与える影響
アルカリ性が強い水(pH8以上)では緑茶の色が黄色〜褐色に変わりやすいと茶業関係者の間で言われていますが、この pH 域と変色の関係を直接検証した一次研究は確認できませんでした。以下は経験則として読んでください。
国産天然水のpHは多くが6.8〜7.2の範囲に収まっています。本記事で中性付近の水を基準にしているのは、科学的な推奨値があるからではなく、MIZUNOMO編集部が「国産天然水の実測pHの中心帯に近い」という基準で選定しているためです。特定のpH範囲を推奨するものではありません。
主な軟水の成分比較——日本茶向き順に並べると

以下は、MIZUNOMOデータベースに収録されている国産軟水(参考としてフランス産のボルヴィックを末尾に掲載)の成分一覧です。
| 商品名 | 硬度(mg/L) | pH | Ca(mg/L) | Mg(mg/L) |
|---|---|---|---|---|
| 屋久島縄文水 | 10 | 7.0 | 2.5 | 1.0 |
| 安曇野の自然が育んだ天然水 | 14 | 6.9 | 5.0 | 0.4 |
| 新潟県津南の天然水 | 17 | 7.0 | 5.0 | 1.0 |
| サントリー天然水(奥大山) | 20 | 6.9 | 4.8 | 1.8 |
| い・ろ・は・す(白州) | 27 | 7.0 | 7.2 | 2.3 |
| サントリー天然水(南アルプス) | 30 | 7.1 | 9.7 | 1.5 |
| サントリー天然水(北アルプス) | 38 | 7.1 | 7.2 | 2.8 |
| ボルヴィック | 60 | 7.0 | 11.5 | 8.0 |
硬度20mg/L前後の奥大山・津南は、Ca・Mgともに極めて少なく、軟水を好む層に人気の高い水です。ボルヴィックはフランス産の比較参考値として末尾に掲載していますが、硬度60mg/LはWHOの4段階分類(60未満:軟水、60〜120:中程度)では「中程度」の境界値にあたります。Ca・Mgの量は国産超軟水の3〜5倍ある点に注意してください。
実際に試したいおすすめ軟水
サントリー天然水(奥大山)——硬度20mg/L・スーパー・コンビニで入手可能
鳥取県・奥大山国立公園のブナ林地下水を採水。硬度20mg/L・pH6.9と日本国内でも最低水準の超軟水です。どこでも入手しやすく、日常的にお茶を淹れる際の基準として選びやすい一本です。
い・ろ・は・す(白州)——硬度27mg/L・コスパと入手性が高い
山梨県・白州の花崗岩層地下水。硬度27mg/L・pH7.0で、コンビニ・スーパー問わず入手しやすい軟水です。500mLから2Lまでサイズ展開が豊富で、急須の水として使いやすいサイズを選べます。
サントリー天然水(南アルプス)——硬度30mg/L・全国流通の定番軟水
南アルプスの花崗岩層を地下約200m浸透した超軟水。硬度30mg/L・pH7.1で、スーパー・コンビニ・ドラッグストアで広く流通しており、入手しやすい国産軟水の代表格です。普段使いとして取り入れやすく、お茶専用に揃えるならこれを基準にするとよいでしょう。
煎茶・抹茶・ほうじ茶——種類別の水選び
茶の種類によっても適した硬度の目安が変わります。
抹茶の泡立てだけは、硬度との関係が実験で確認されています。 池田博子は市販ミネラルウォーター15種・水道水・蒸留水で抹茶の起泡性を比較し、硬度が上がると泡量は減少する一方、できた泡の安定性は向上するという結果を報告しています(日本調理科学会誌 39(4) 254-258, 2006)。
つまり「泡をしっかり立てたい」なら軟水側、「立てた泡を長く保ちたい」なら硬度がある側が有利で、どちらか一方が優れているわけではありません。超軟水を選ぶのは前者を重視する場合の選択です。
煎茶・玉露・ほうじ茶については、硬度と味の関係を直接検証した一次研究を確認できませんでした。以下は科学的推奨ではなく、産地や専門店で語られる経験則です。
- 煎茶・玉露: 専門店では、Ca・Mgが少ない超軟水で淹れたほうが味が出やすいとする声が多くあります。
- ほうじ茶・番茶: 軟水の範囲内であれば、硬度の違いによる味の変化が比較的感じにくいとされています。
MIZUNOMOで日本茶向きの水を探す
「どの水を選べばいい?」と迷ったら、MIZUNOMOの超軟水ランキングから探すのが一番の近道です。硬度・pH・採水地のデータが揃った国産・海外の水80種以上を比較できます。お茶用途のランキングもあわせてご覧ください。
参考情報
- 堀江秀樹・山内雄二・木幡勝則「緑茶の硬水浸出液に生じる白色沈殿」日本食品科学工学会誌 45(6) 364-367, 1998(白色沈殿をシュウ酸カルシウムと同定)
- 池田博子「水の硬度が抹茶の起泡性に及ぼす影響」日本調理科学会誌 39(4) 254-258, 2006(硬度上昇で泡量は減少、泡の安定性は向上)
- 農林水産省「茶をめぐる情勢」(茶の生産・流通の統計資料。抽出条件の根拠ではありません)
- MIZUNOMO お茶向き水ランキング
- MIZUNOMO 超軟水ランキング(硬度の低い順)
- MIZUNOMO 水データベース(全商品一覧)
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
プロフィール: iihito.jp ↗


