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なぜ霧島の天然水だけ「シリカ120mg/L超」なのか?火山地質が生むシリカ含有量の科学

MIZUNOMO編集部公開 2026年5月1日更新 2026年7月22日読了時間 4

霧島の火山地質が育んだシリカ豊富な天然水と成分の科学

「シリカ水」という言葉を見かけることが増えてきました。美容家やアスリートが愛飲し、コンビニの棚でもシリカをうたった天然水が並ぶようになっています。ところで、「シリカ」とは何者で、なぜ霧島産の天然水だけが特別に高い含有量を誇るのでしょうか?その答えは、九州南部の火山地質にあります。本稿では、シリカの化学的正体から火山地質による溶出メカニズム、含有量が採水深度で変わる仕組み、そして「シリカには食事摂取基準の指標が設定されていない」という事実まで、科学的な視点で掘り下げます。


シリカ(ケイ素)の正体 — 地球で2番目に多い元素

シリカとは、化学式SiO₂で表される二酸化ケイ素のことです。ケイ素(Silicon、元素記号Si)は酸素に次いで地球の地殻に最も多く存在する元素で、岩石・砂・土壌の主成分として地球のいたるところに存在します。

食品では大麦・玄米・バナナ・緑茶などに含まれており、私たちは知らずに毎日20〜50mgほどを食事から摂取しています。水溶性のシリカは単珪酸(H₄SiO₄)の形で水に溶け込み、これが「シリカ水」の正体です。

シリカは岩石・砂・土壌の主成分であり、人体にも微量が存在します。ただし後述のとおり、ヒトにおける必要量について公的な指標(推奨量・目安量・耐容上限量)は定められていません。


霧島が「シリカの聖地」になった地質学的理由

霧島連山の採水地 — 火山性玄武岩層が生む超軟水かつ高シリカ水

日本の天然水の平均的なシリカ含有量は20〜30mg/L程度です。ところが、鹿児島県・宮崎県にまたがる霧島連山を水源とする天然水には、73mg/L〜最大160mg/Lという際立って高いシリカが溶け込んでいます。なぜこれほどの差があるのでしょうか。

火山地質のSiO₂溶出メカニズム

霧島連山は、数十万年にわたる複数の火山活動が積み重なった典型的な火山フロントです。噴出した溶岩や火砕物が冷えて固まった岩石(安山岩・流紋岩・玄武岩など)は、SiO₂を50〜75%程度含有します。降水が地表に浸み込み地下水脈まで到達する数十年〜数百年の旅の間に、雨水に含まれる弱酸性の炭酸がSiO₂をゆっくりと溶かし、単珪酸として水中に移行させます。

この過程を「シリカ溶出(風化作用)」と呼びます。通常の堆積岩地帯より火山岩帯のほうがSiO₂含有率が高いため、霧島の地下水は必然的に高シリカになるのです。

深度が含有量を左右する

霧島産の主要商品を見ると、採水深度とシリカ含有量に明確な関係があります。

商品名採水深度シリカ含有量
霧島の奇跡〜100m120mg/L
霧島天然水のむシリカ〜100m97mg/L
霧島福寿天然水100m73mg/L
霧島福寿鉱泉水855m160mg/L

地下深くに達するほど岩石との接触時間が長くなり、シリカが濃縮されます。855m深の鉱泉水が160mg/Lという桁外れの値を示すのはこのためです。一方で志布志産(鹿児島県)の天然水もシリカ85mg/Lと高く、九州南部の火山帯全体に共通する地質特性が影響しています。


シリカには「摂取基準」が存在しない — 先に正直に書きます

シリカ(ケイ素)は、水選びの指標として扱うのが難しい成分です。理由は次のとおりです。

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に、ケイ素の推奨量・目安量・耐容上限量のいずれも設定されていません。「1日にどれだけ摂ればよいか」「摂りすぎの上限はどこか」に公的な答えがありません。
  • 国民生活センターの調査(2022年12月)は、日本に加え米国・欧州でも十分な科学的根拠が得られないとして、ケイ素にこれらの指標が設定されていないと報告しています。
  • 栄養機能食品の規格基準(食品表示基準 別表第11)の対象成分でもありません

このため、含有量160mg/Lの水が97mg/Lの水より「優れている」とは言えません。比較の物差し(推奨量)が存在しないからです。「シリカが必須ミネラル」「不足しがち」といった説明も、法令以前に事実として裏付けがありません。

では、シリカ含有量に意味はないのか——含有量は、その水が火山性の地層をどれだけ通ってきたかを映す地質の記録として読むことができます。前述の溶出メカニズムそのものであり、健康効果としてではなく「水の履歴書」として捉えるのが、科学的に正確な向き合い方です。


フラミンガム研究をどう読むか — 相関研究とその限界

シリカと骨の関係でよく引用されるのが、2004年に発表されたフラミンガム子世代研究(Framingham Offspring Cohort Study)です。

この研究では30〜87歳の2,847名を対象に、食事からのシリカ摂取量と骨密度(脊椎・大腿骨頸部)を比較しました。結果として、男性および閉経前女性において、食事性シリカ摂取量が多いほど大腿骨頸部骨密度が高いという正の相関が報告されました(Journal of Bone and Mineral Research, 2004)。

ただし、この結果は次の限界を踏まえて読む必要があります。

  • これは観察研究であり、「シリカを多く摂る人は骨密度が高い傾向がある」という相関を示すもので、シリカを摂れば骨密度が上がるという因果関係を証明したものではありません
  • 観察されたのは食事全体からのシリカ摂取量との関連であり、特定の飲料の摂取を検証したものではありません。
  • シリカには前述のとおり公的な摂取基準が存在しないため、「何mg摂れば十分か」という閾値も定められていません。

科学的に正直な評価 — エビデンスの現在地

シリカ水の成分分析と科学的根拠の現状

ここで重要な注意点があります。フラミンガム研究は観察研究であり、「シリカを多く食べる人は骨密度が高い傾向がある」という相関を示すものです。シリカ水を飲むと骨密度が上がるという因果関係を証明したものではありません。

昭和大学の梅垣敬三教授をはじめ複数の専門家が、「健康食品やサプリメントとしてシリカを摂取した場合の美容・健康効果について、人における信頼性の高いRCT(ランダム化比較試験)は現時点では不十分」と指摘しています。国民生活センターも同様の見解を示しています。

つまり現状では:

  • 摂取量の相関データ:あり(フラミンガム研究など)
  • 介入試験(RCT)での有効性の確認:不十分
  • 安全性:天然水由来のシリカは食品添加物としても承認されており、通常量の飲用では問題なし

シリカ水を「魔法の美容水」として過信するのではなく、良質な水分補給の一形態として日常に取り入れるという姿勢が科学的に誠実なアプローチといえます。


シリカ含有量の見方と選び方

摂取量の目安は「定められていない」

シリカには現在、日本でも海外でも公式の食事摂取基準(推奨量・目安量・上限量)は設定されていません。食事からの推定摂取量は20〜50mg/日程度とされますが、そもそも「不足」や「十分」を判断する公的な基準そのものが存在しない点に注意が必要です。「1日に何mg摂るべき」という目安は示せません。

実際に選ぶときの軸

シリカ含有量そのものは多寡で優劣を判断できないため、日常的に扱いやすい指標で選ぶのが現実的です。

  1. 硬度で選ぶ — 霧島産は高シリカでも超軟水〜軟水が多く、クセが少なく飲みやすい傾向があります
  2. 味わい・価格・入手しやすさで選ぶ — 毎日続ける飲料なので、無理なく続けられるかを重視するのが現実的です
  3. ラベルで含有量を確認する — シリカ量を知りたい場合は、商品の成分表示欄で「ケイ素」または「Si」の項目を確認しましょう。日本のコンビニやスーパーで手軽に入手できる天然水の多くは20〜40mg/L程度です

MIZUNOMOで「シリカ量」を比較する

MIZUNOMOでは国内外40種以上のペットボトル水の成分データを公開しており、シリカ(ケイ素)含有量も収録しています。霧島産の高シリカ水から硬度の低い超軟水まで、用途や体調に合わせて水を選べます。

「あの天然水はシリカが何mg入っているの?」という疑問は、MIZUNOMOのMIZU情報ページからすぐに確認できます。実際に飲んだ方のNONDA記録も参考にしながら、自分の「マイシリカ水」を見つけてみてください。

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まとめ

  • シリカ(ケイ素)は地球で2番目に多い元素で、火山性岩石に豊富に含まれる
  • 霧島連山の火山地質が数百年かけて地下水にシリカを溶出させ、73〜160mg/Lという高含有量を実現する
  • フラミンガム研究など観察研究では食事性シリカと骨密度の相関が報告されているが、飲料での介入試験(RCT)による因果関係の確立は現時点では不十分
  • 「魔法の水」ではなく「良質な水分補給の一選択肢」として継続的に取り入れることが科学的に誠実なアプローチ
  • シリカ含有量はラベルの「ケイ素(Si)」欄で確認できる

参考情報

監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)

プロフィール: iihito.jp ↗

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