「北アルプスの天然水」vs「南アルプスの天然水」——同じサントリーなのに硬度・ミネラルが違う理由を地質で徹底解説
スーパーやコンビニの棚に並ぶ「サントリー天然水」。よく見ると、北アルプスと南アルプスという2つのラインが存在することに気づいた方もいるのではないでしょうか。同じブランドなのに、硬度は北アルプスが38mg/L、南アルプスが30mg/Lと異なります。カルシウムとマグネシウムの比率も逆転しており、飲み比べると明らかに味が違います。

この違いはなぜ生まれるのか。答えは2つの山脈が歩んできた地質の歴史にあります。本記事では、地質学的背景から成分データ、味の科学、用途別のおすすめまで徹底解説します。
北アルプスと南アルプス——同じ日本アルプスでも「生い立ち」が違う
「日本アルプス」というと、飛騨山脈(北アルプス)・木曽山脈(中央アルプス)・赤石山脈(南アルプス)の3つを指します。サントリー天然水の採水地は、このうち北と南の2ヶ所です。
北アルプス採水地(長野県)
サントリー天然水(北アルプス)の採水地は長野県・北アルプス山麓です。北アルプス(飛騨山脈)は、複数のプレートの衝突によって数百万年をかけて隆起を続けた比較的若い山脈です。地質は主に花崗岩・変成岩で構成され、急峻な地形が特徴。雪解け水や雨水は急勾配の山肌を伝って地下に浸透し、地下約150mの花崗岩層でボトリングされます。
南アルプス採水地(山梨県)
サントリー天然水(南アルプス)の採水地は山梨県・南アルプス山麓です。南アルプス(赤石山脈)は古い地層(三波川変成帯・秩父帯)を含む複雑な地質構造を持ちますが、採水地周辺は花崗岩系の地質が広がっています。水の浸透深度は地下約200mと北アルプスより50m深く、より長い時間をかけてろ過されます。
「同じ花崗岩なのになぜ成分が違う?」
両者とも花崗岩層の深層地下水でありながらミネラル成分が異なるのは、①採水深度の差(150m vs 200m)と②地質年代・岩石組成のわずかな違いによるものです。
地下水は花崗岩の割れ目や間隙を通過する際、岩石に含まれる長石・雲母などからミネラルをわずかに溶出します。浸透時間や通過する岩盤の組成によって、どのミネラルがどれだけ溶けるかが変わり、同じ「花崗岩系軟水」でも銘柄ごとに個性が生まれるのです。
成分データを数字で比較
実際の成分データを並べてみましょう。
| 項目 | 北アルプスの天然水 | 南アルプスの天然水 |
|---|---|---|
| 硬度 | 38mg/L | 30mg/L |
| pH | 7.1 | 7.1 |
| カルシウム(Ca) | 7.2mg/L | 9.7mg/L |
| マグネシウム(Mg) | 2.8mg/L | 1.5mg/L |
| ナトリウム(Na) | 5.1mg/L | 6.5mg/L |
| カリウム(K) | 1.4mg/L | 2.8mg/L |
| 採水深度 | 地下約150m | 地下約200m |
| 採水地 | 長野県 | 山梨県 |
注目すべき点はCa:Mg比の逆転です。
- 北アルプス:Ca 7.2 / Mg 2.8 → 比率 約2.6:1
- 南アルプス:Ca 9.7 / Mg 1.5 → 比率 約6.5:1
南アルプスの天然水はカルシウムが相対的に豊富で、北アルプスの天然水はマグネシウムが多い——この逆転こそが、飲んだときの「印象の違い」を生む鍵です。

Ca:Mg比が決める「味の違い」の科学
水の味を左右する主要なミネラルはカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)です。
カルシウム(Ca)が多い水 → まろやか・コクがある カルシウムイオン(Ca²⁺)は口腔内で穏やかな刺激を与えます。Ca比率が高い軟水は「まろやかさ」や「ほのかなコク」として感じられやすく、南アルプスの天然水が「まろやか」と表現される理由の一つです。
マグネシウム(Mg)が多い水 → キレ・すっきり感が増す マグネシウムイオン(Mg²⁺)はわずかに苦味・刺激感を与える成分として知られています。北アルプスのMg 2.8mg/Lは南アルプスの約1.9倍であり、これが「キレがある」「すっきりした飲み口」として表れます。
両者ともpHは7.1と同一ですが、Ca:Mg比の差が味の個性を作り出していることがわかります。
豆知識: 世界のトップシェフがペアリングウォーターを選ぶ際、Ca:Mg比に注目することがあります。旨みを引き出したい出汁や緑茶にはCaの多いまろかかな水を、すっきりした後味を求めるシーンにはMgのキレある水を選ぶという発想です。
どちらが入手しやすい?流通エリアの傾向
サントリー天然水は工場から近い地域に供給される仕組みになっており、居住エリアによってどちらが手に入りやすいかが変わります。
- 南アルプスの天然水(山梨県産):主に東日本エリア(関東・東海)で流通することが多い
- 北アルプスの天然水(長野県産):主に西日本エリア(北陸・関西・中部)で流通することが多い
そのため、東京のコンビニには「南アルプスの天然水」が並ぶことが多く、大阪や名古屋では「北アルプスの天然水」が主流になる傾向があります。どちらも全国のネット通販では取り寄せが可能です。
用途別おすすめ——どちらを選ぶ?
赤ちゃんのミルク・離乳食に
どちらも硬度30〜38mg/L の軟水で、粉ミルクの調乳に使われる水として一般的な硬度帯です。粉ミルクはミネラル組成を設計した上で作られているため、硬度の低い水ほど設計値を動かしません。
なお「WHO が調乳に硬度60mg/L以下を推奨している」という説明が広く流通していますが、そのような基準は存在しません。FAO/WHO のガイドライン(厚生労働省が翻訳を採用)が定めているのは 70℃以上の湯で調乳し2時間以内に飲むことと、使用する水を「水道水」「水質基準を満たす井戸水」「乳児用調乳に推奨される市販の容器入り水」から選ぶことです。硬度より先に、煮沸と温度を確認してください。
日本茶・緑茶・出汁に
南アルプスの天然水(まろやか) がおすすめです。Ca比率が高い軟水は、緑茶のカテキンや旨み成分を穏やかに引き出します。昆布・鰹出汁でも同様で、旨みが素直に溶け出します。
日常の水分補給・スポーツ後に
北アルプスの天然水(キレあり) も優れた選択肢です。Mgによる引き締まった口当たりは、運動後の一杯として爽快感があります。
コーヒー・ドリップに
どちらも相性良好。軟水はコーヒーの酸味と甘みを素直に抽出します。Mgの多い北アルプスはすっきりとした後味が際立ち、浅煎りのスペシャルティコーヒーとの相性が特によいとされます。
ミネラル補給を意識するなら
北アルプスの天然水。Mg 2.8mg/Lは南アルプスの1.5mg/Lより豊富で、日本人が不足しがちなマグネシウム(厚労省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」推奨量:18〜29歳男性340mg/日・18〜29歳女性270mg/日)の補充に少しだけ有利です。
同じブランドで「採水地を選ぶ」という楽しみ
「南アルプスの天然水」は国内販売本数No.1(サントリー調べ)を誇る知名度の高い天然水です。一方「北アルプスの天然水」は北陸・関西エリアで長年愛されてきたローカルな天然水で、どちらも同じサントリーが採水から品質管理までを担っています。
この「採水地が違えば水も違う」という事実は、MIZUNOMOが大切にしている哲学——水は地質を映す鏡——とも重なります。ブランドロゴだけで選ぶのではなく、採水地の地質や成分比率まで知ったうえで「自分の水」を見つける楽しみが広がります。
まとめ
| 北アルプスの天然水 | 南アルプスの天然水 | |
|---|---|---|
| 味の個性 | キレ・すっきり | まろやか・コク |
| 硬度 | 38mg/L | 30mg/L |
| Ca:Mg比 | 2.6:1 | 6.5:1 |
| 採水深度 | 約150m | 約200m |
| 主な流通エリア | 西日本中心 | 東日本中心 |
2つのサントリー天然水は、同じ花崗岩系深層地下水でも採水深度と岩盤組成のわずかな差がCa:Mg比を変え、それが「まろやか vs キレ」という味の個性につながっています。どちらが優れているということはなく、用途や好みで選べる選択肢があることが豊かさです。
MIZUNOMOでは、両商品の詳細な成分データと実際に飲んだユーザーのNONDA記録を確認できます。
参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
プロフィール: iihito.jp ↗

