アサヒ「おいしい水 天然水 ソルティグレフル」5月19日発売——0.1%食塩水設計と天然水×塩×ビタミンCの熱中症科学

2026年5月19日、アサヒ飲料が「おいしい水 天然水 ソルティグレフル」を全国発売しました。深い地層でゆっくりろ過された天然水(深井戸水)を基に、グレープフルーツ果汁・食塩・ビタミンCを配合した600mlのPETボトルです。1本あたりの食塩相当量は0.66g、ナトリウムに換算すると約260mg——これは厚生労働省・労働安全衛生法が推奨する「0.1〜0.2%食塩水」の下限とほぼ一致する設計です。
熱中症警戒アラートが本格稼働する6月を前に、「天然水に塩を入れる」というシンプルな発想の科学的根拠と、このアプローチがなぜ今のミネラルウォーター市場で意味を持つのかを解説します。
製品概要:「おいしい水」シリーズ初の熱中症対策仕様
「アサヒ おいしい水 天然水 ソルティグレフル」の主な仕様
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売日 | 2026年5月19日(全国) |
| 容量・容器 | 600ml PETボトル |
| 希望小売価格 | 175円(税別)/189円(税込) |
| カロリー | 28kcal/100ml(168kcal/本) |
| 食塩相当量 | 0.11g/100ml(0.66g/本) |
| 主な原材料 | ナチュラルミネラルウォーター(深井戸水)、果糖ぶどう糖液糖、グレープフルーツ果汁、食塩、ビタミンC |
天然水に果汁と食塩を加えた「清涼飲料水」の分類で、カロリーはわずかにありますが、スポーツドリンク(一般的に約25〜50kcal/100ml)と同程度の軽い設計です。グレープフルーツの甘酸っぱい風味で飲みやすさを高めつつ、塩分補給を両立させた商品コンセプトとなっています。
アサヒ飲料は2025年から「おいしい水 天然水 ピングレソルティ」(ピンクグレープフルーツ×ビタミンC×塩)をラインナップに加えており、今回のグレープフルーツ版はそのバリエーション展開に位置づけられます。同シリーズ内では「からだ澄む水」(シトルリン配合・4月発売)も含め、アサヒの天然水ブランドが機能性を付加する方向に舵を切っていることがわかります。
熱中症の科学:なぜ「水だけ」では不十分なのか
夏に大量の汗をかくと、水分だけでなくナトリウム(塩分)も同時に失われます。一般的に汗1L中には塩分(NaCl換算)約1〜2gが含まれており、日差しの強い屋外での1時間の活動では水分500ml+塩分約2gの補給が推奨されています(川崎北労働基準監督署・熱中症対策資料)。
ここで重要になるのが「水分補給のジレンマ」です。
汗をかいたからといって純水だけを大量に飲むと、体内の電解質(ナトリウム)がさらに薄まります。これを「水中毒(低ナトリウム血症)」と呼び、頭痛・吐き気・けいれんを引き起こすことがあります。逆に塩分の補給なしに水分だけを補った場合も、ナトリウム濃度の低下により、細胞の水分調節機能が乱れ、熱痙攣や脱力が起こりやすくなります。

では適切な塩分濃度はどれくらいか——。
厚生労働省の熱中症対策ガイドラインや産業医学の現場では、「ナトリウム40〜80mg/100ml」または「食塩濃度0.1〜0.2%」のスポーツドリンクもしくは食塩水が推奨されています。
アサヒ「ソルティグレフル」の食塩相当量は0.11g/100ml(0.11%)。これはナトリウムに換算すると約43mg/100mlとなり、推奨下限の40mg/100mlにほぼ一致する設計です。
| 飲料カテゴリ | ナトリウム目安(100mlあたり) |
|---|---|
| 推奨食塩水(下限) | 40mg |
| アサヒ ソルティグレフル | 約43mg |
| 一般的なスポーツドリンク | 40〜80mg |
| 純粋な天然水(例:南アルプスの天然水) | 約0.6mg |
この数字を見ると、「天然水×塩」という組み合わせがいかに科学的に計算されているかがわかります。純粋な天然水(ナトリウム約0.6mg/100ml)では1000倍以上の差があり、暑熱下での塩分補給には機能しません。
「0.1%食塩水」の体感と1本で補えるナトリウム量
0.11%という食塩濃度は、舌で感じる「ほのかな塩味」のレベルです。食塩水として飲むと塩辛さが気になる0.3〜0.5%よりはるかに薄く、グレープフルーツの風味で塩味はほぼ感じません。市販スポーツドリンクの多くも同様に0.1〜0.2%前後の設計で、「飲みやすさと電解質補給の両立」を実現しています。
600ml1本あたりのナトリウム補給量は約260mg。汗1Lで失うナトリウムが700〜800mg程度であることを考えると、1本でそのおよそ3分の1を補える計算です。こまめな水分補給を推奨する現代の熱中症対策(「のどが渇く前に飲む」)と組み合わせれば、屋外活動1〜2時間分の塩分ロスをカバーできるでしょう。
ビタミンCはなぜ入っているのか
ソルティグレフルに配合されたビタミンCには、熱ストレスへの対応という側面があります。
強い紫外線や高温下での身体活動は、体内で活性酸素(フリーラジカル)の産生を増加させます。ビタミンCは代表的な水溶性抗酸化物質であり、この酸化ストレスに対抗する作用が知られています。また、汗にはビタミンCがわずかに含まれており、長時間の発汗では体内のビタミンCプールが消費されていきます。
なお、ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です(栄養機能食品の規格基準による定型表現)。ただし、ペットボトル飲料に配合される量で1日に必要な量が満たされるわけではなく、あくまで食事全体のなかで捉える成分です。
「塩で電解質を補い、ビタミンCで酸化ストレスを軽減する」——このダブルアプローチが、単なる味付き水との差別化ポイントです。
機能性水の台頭:「水に何かを加える」時代
2024年のミネラルウォーター市場は販売金額4,794億円(前年比10.5%増)と3年連続過去最高を記録。一方で市場の変化として目立つのは「機能性水」の台頭です。
- アサヒ「からだ澄む水」(4月発売): シトルリン71mg配合、血流サポート
- アサヒ「おいしい水 天然水 ソルティグレフル」(5月発売): 食塩+ビタミンC、熱中症対策
- サントリー「ロコモアWATER」(4月発売): グルコサミン・コンドロイチン配合、運動器サポート
天然水そのものの品質競争から、「何を加えるか」の機能設計競争へ。水分補給の目的が「のどを潤す」から「特定の健康課題に対応する」へとシフトしている動きは、2026年夏の飲料市場の最も重要なトレンドといえます。
MIZUNOMOデータで見る天然水のナトリウム
MIZUNOMOが掲載する50種以上の天然水データを見ると、ナチュラルミネラルウォーターのナトリウム含有量は多くの銘柄で1〜5mg/100mlに収まります。南アルプスの天然水(約0.6mg)、六甲のおいしい水(約1.6mg)、コントレックス(約0.7mg)——いずれも熱中症対策としての塩分補給には不十分です。
この事実は「水は水、塩分は別途補う」という従来の常識を映しています。今回の「ソルティグレフル」のような製品は、その2つを1本に統合しようとする試みであり、天然水の純粋性にこだわる消費者と、利便性・機能性を求める消費者の間で新たな選択肢を提示しています。
購入を検討する際は、1本あたりのカロリー(168kcal)と塩分(0.66g)も考慮した上で、ご自身の活動量や目的に合わせて活用してください。純粋な水分補給が目的なら従来の天然水を、暑熱下での塩分補給まで求めるなら本製品が有力な選択肢になります。
参考情報
- アサヒ飲料ニュースリリース(2026年5月7日): https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2026/pick_0507.html
- 川崎北労働基準監督署 熱中症対策資料: https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/
- 大塚製薬「効率的な水分補給」: https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/heat-disorders/replenish/
- 日本高血圧学会「夏の日常生活における水分と塩分の摂取について」: https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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