「お酒より水」がZ世代の本音——ソバーキュリアスが動かす5,057億円ミネラルウォーター市場の容量・容器革命

「飲み会に行くけれど、お酒は飲まない」——そんな選択をする若者が日本でも増えている。「ソバーキュリアス」と呼ばれるこの潮流が、5,057億円(2025年)のミネラルウォーター市場を静かに、しかし確実に動かし始めている。食品業界の専門紙・食品新聞が2026年6月28日に報じた市場動向調査が示すのは、「無色透明の水」があらゆる飲み物のハブになりつつある新時代だ。
Z世代の「好きな飲み物」1位はミネラルウォーター
サントリービバレッジ&フードが2024年に実施した意識調査によると、Z世代の好きな飲み物ジャンルランキングで「ミネラルウォーター」がお茶・ジュースを抑えて46.0%で1位を獲得した(出典: サントリービバレッジ&フード 2024年年代別ミネラルウォーター意識調査)。中でも「ミネラルウォーターをメインの飲料として飲んでいる」Z世代は約7割に上り、水が「特別なシーン用の飲み物」から「日常の第一選択」に変わったことを示している。
この背景にあるのが「ソバーキュリアス(Sober Curious)」の台頭だ。
ソバーキュリアスとは——「飲める体質でもあえて選ばない」新価値観
ソバーキュリアスとは、アルコールを飲める体質であるにもかかわらず、意識的にお酒を飲まない(または量を減らす)ライフスタイルを指す。「ソバー(しらふ)」と「キュリアス(好奇心)」を組み合わせた造語で、英国発のムーブメントが世界に広がった。
NCSolutionsの2023年調査では、Z世代の約70%が「飲みたくない」を理由にアルコールを控えると回答。健康意識の高まり・睡眠の質への関心・SNSでの自己管理発信文化が、若者層の飲酒行動を大きく変えている。
そして、会食の場や晩酌の場面でお酒の代わりに選ばれるのが「ミネラルウォーター」だ。アルコール代替飲料の市場調査では、飲まないシーンでの代替飲料としてミネラルウォーターが20%の選択率で上位に入っている(ソバーキュリアス関連調査)。「ただのお水」ではなく、「食事に合う・見た目にこだわる・成分に意味がある」水がテーブルに並ぶようになっている。
5,057億円市場が迎えた「差別化の新フェーズ」

日本ミネラルウォーター協会の統計によると、2025年の国内ミネラルウォーター類の年間販売金額は前年比3.1%増の5,057億円で金額ベース過去最高を更新した。しかし生産量は6年ぶりの減少に転じており、「本数が減っても金額は増える」という単価上昇の構造が定着している。
食品新聞が2026年6月28日付で報じた市場動向によれば、大手各社はここに来て「容量・容器・ラベル」を軸にした差別化に活路を求めている。水は本来「無色透明・無味無臭」で、成分差だけでは売り場での訴求が難しい。そこで各社が知恵を絞るのが「どのサイズで、どのパッケージで、どんな場面に届けるか」という体験設計だ。
「ちょうどいい大きさ」が差別化の武器——375mlと700mlが示す新文法
サントリー天然水:375ml誕生で「ライフスタイルの隙間」を埋める
サントリービバレッジ&フードは2024年に「サントリー天然水」1Lの容器形状を刷新。その結果、2025年の販売数量は対前年比約3割増と大幅に拡大した(食品新聞 2026年6月28日)。この成功を受け、2026年3月には375mlサイズを新設。バッグに収まりやすい「飲み切りパーソナルサイズ」として、ソバーキュリアス世代が求める「外出先でも特別感のある水」の需要を捉えにいった。
クリスタルガイザー:700mlが語る「500ml/2Lの二択から解放」
大塚食品の「クリスタルガイザー」が早期から育ててきた700ml商品は、「500mlでは足りない、2Lでは多い」という実態ニーズに刺さり、ブランド牽引役に成長した(食品新聞 同号)。ソバーキュリアス世代が会食でボトルウォーターを選ぶ場面では、見た目の存在感と適切な量感が重視される。700mlのシルエットは「ワインボトルに近い量感」として、食卓での代替感を自然に演出できる。
アサヒが選んだ差別化軸——「環境価値」と「ラベルのシンプルさ」
アサヒ飲料は「アサヒ おいしい水 天然水」で、はがしやすい「シンプルecoラベル」を差別化の柱に位置づけ、2026年にはラベルデザインをさらに刷新してキャンペーンを通じた認知拡大を図っている(食品新聞 同号)。
環境意識が高いZ世代・ソバーキュリアス層には、「持続可能なパッケージ」という訴求が刺さりやすい。お酒を飲まない場面で選ぶ水に「ちょっとだけ意味がある」——そのひと押しが購買行動に影響する。
「水で語るライフスタイル」の時代へ

ソバーキュリアスの広がりは、水を単なる「水分補給の手段」から「生活スタイルを表現するアイテム」へと押し上げている。10〜30代で出かけるときに水を持ち歩く割合が65%以上に達する(サントリー 2025年調査)という数字は、ミネラルウォーターがスマートフォンと同じように「常時携帯するもの」になりつつあることを示している。
ミネラルウォーター市場が5,057億円に達した今、次の成長ドライバーは「何を飲むか」だけでなく「どんなサイズで、どんなパッケージで、どんな場面で飲むか」というライフスタイル提案にある。容量・容器・ラベルという「水の外側」の革命は、ソバーキュリアスとZ世代の台頭が生んだ、2026年夏の水市場を読み解く最重要キーワードだ。
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参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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