「ボトルtoボトル」が本格始動——サントリー・アサヒ飲料が全国で自治体連携、天然水PETのCO2を60%削減へ

ペットボトル水を飲み終わったあと、そのボトルが「また天然水のボトル」として生まれ変わる仕組みが、2026年に入って急速に広がっている。サントリーやアサヒ飲料が全国の自治体と「ボトルtoボトル」水平リサイクル協定を次々と締結し、家庭から回収されたペットボトルを同じペットボトルに戻すサイクルが動き始めた。石油由来の新規素材で作るよりCO2を約60%削減できるこの技術は、飲料業界の脱炭素戦略の核心にある。
そもそも「ボトルtoボトル」とは何か
ペットボトルのリサイクルには、大きく2つの方向がある。
ひとつは「カスケードリサイクル」と呼ばれる方法で、回収したペットボトルを繊維(ポリエステル素材)や卵パック、フィルムなどに加工する。従来は多くのペットボトルがこのルートをたどってきた。ただしカスケード品は品質が低下しており、さらなるリサイクルを経て最終的には廃棄に至る。資源の「格下げ」が起きる構造だ。
もうひとつが「水平リサイクル」=「ボトルtoボトル」で、使用済みペットボトルを再び飲料容器グレードのペットボトルに戻す。同じ品質・同じ用途で循環させるため、理論上は永続的な資源ループになる。
全国清涼飲料連合会は2021年、2030年までにボトルtoボトル比率を50%に引き上げることを宣言(2019年比較の基準値は12.5%)。2023年時点で33.7%に達し、目標達成に向けて前進している。
なぜ今なのか——2026年の製造コスト構造が背中を押す
ボトルtoボトルが急加速する背景には、石油化学の現状がある。
ペットボトルの素材PET樹脂は石油(ナフサ)から作られる。2026年春からの原油価格高騰によりナフサ価格が上昇し、バージン(石油由来の新規)PETの調達コストが増した。再生PETの活用は環境負荷の低減と同時に、原材料リスクの分散にもつながる。
CO2削減効果は数字が明確だ。PETボトルリサイクル推進協議会のデータによると、再生PETはバージンPETと比較してCO2排出量を約56〜63%削減できる。サントリーは「約60%削減」を公開目標の指標として掲げている。
2つのリサイクル技術——メカニカルとケミカル
ボトルtoボトルの実現には、主に2つの技術が使われる。
メカニカルリサイクルは物理的再生法だ。回収したペットボトルを洗浄・粉砕・溶融して再びペレット状のPET素材に加工する。処理コストが比較的低く、歴史も長い。一方で、繰り返し処理するたびに分子量が低下して品質が落ちる限界がある。
ケミカルリサイクルは化学的分解・再重合法だ。PETを化学的に分子レベルまで分解し、モノマーに戻してから再度重合する。品質はバージンPETと同等水準まで回復できるが、エネルギーと設備コストがかかる。
アサヒ飲料が採用しているのは両技術の組み合わせだ。メカニカルリサイクルの工程で発生する残余物をケミカルリサイクルで処理することで、単一技術では難しいリサイクル率の最大化を目指している。

飲料大手が自治体と連携を加速
飲料メーカー単独では、家庭から分別回収されたペットボトルの確保が難しい。そのため、自治体との協定が普及のカギになっている。
アサヒ飲料は2026年に入ってから複数の協定を締結した。
- 宮城県東松島市(2026年3月締結・同4月事業開始): メカニカルとケミカルの組み合わせで地域回収ペットボトルをボトルtoボトルへ。市民への啓発活動も実施
- 大阪府吹田市(2025年10月締結・2026年4月事業開始): 遠東石塚グリーンペット・ペットリファインテクノロジーと4者協定を締結。親子ワークショップも展開
- 岐阜市(2026年1月締結): ケミカルリサイクルも併用したハイブリッド方式
サントリーは2011年にボトルtoボトル技術を確立し(同社サステナビリティ報告書によると「国内飲料業界で初」)、2012年に実用化した。以降、茅野市・深川市・龍ケ崎市・あきる野市・塩尻市など全国各地の自治体と協定を積み上げてきた。2030年目標として「グループで使用する全ペットボトルの素材を、リサイクル素材または植物由来素材のみとし、化石由来原料の新規使用ゼロ」を掲げている。
消費者がボトルtoボトルの品質を左右する
ボトルtoボトルが機能するかどうかは、回収されるペットボトルの品質に依存する。異物混入・汚れ・未洗浄のボトルはリサイクル工程でロスになる。
家庭でできることは明確だ:
- ラベルは剥がす(PETと素材が異なるため選別が必要)
- キャップは外す(自治体によっては別回収)
- 中身を空にして軽くすすぐ(汚染防止)
- 指定回収場所に出す(スーパーの店頭回収は品質が高く優先的にボトルtoボトルへ回される場合がある)
消費者の分別精度がそのままリサイクル率と品質に直結する。「飲んだら分ける」という行動が、次のボトルの原料になる。
天然水のペットボトルとリサイクルの相性
天然水ブランドは、製品の「自然・清潔」イメージと循環型設計が親和性を持つ。サントリー天然水の南アルプス・北アルプス・奥大山・阿蘇、アサヒおいしい水の富士山や六甲——これらのボトルが、飲み終わったあと再び採水地ブランドの天然水として店頭に並ぶサイクルが整いつつある。
MIZUNOMOに登録された天然水には成分・産地情報に加え、NONDA記録を通じた飲用実績データが集まっている。水を選ぶ視点に「容器の持続可能性」を加えることで、買う行動自体が循環型社会への参加になる。
参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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