「ラベルなし水」が自販機で1本から買えるようになった——2026年7月の省令改正とコカ・コーラの10月全国展開
外出先の自動販売機で、ラベルのない水が買える時代になる。
コカ・コーラシステムは2026年10月から、全国の自動販売機で「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」(540ml・希望小売価格180円税別)の販売を順次開始すると発表した。自動販売機でのラベルレス天然水の本格展開は、業界全体として前例がなかった取り組みだ(食品産業新聞社、2026年8月)。
この動きを可能にしたのは、2026年7月30日に経済産業省が施行した資源有効利用促進法の省令改正だ。改正により、一定の条件を満たすラベルなしPETボトルが「1本単位のばら売り」に対応できるようになった。

なぜ「ラベルなし水」は今まで1本で買えなかったのか
ペットボトル飲料には、資源有効利用促進法に基づき、PET識別マーク(「PET」の文字)の表示が義務づけられている。これは分別回収を正確に行うための規定で、消費者がゴミを正しく捨てられるようにするための仕組みだ。
ラベルのないペットボトルは、このPETマークを側面ラベルに印刷できない。かつての制度では、ボトル側面の印刷かラベルへのPETマーク表示が必須だったため、ラベルレス商品はEC通販でのケース販売(まとめ買い)しか選択肢がなかった。
2020年4月には一部改正があり、「外箱にPETマークを表示すれば、箱の中のボトル側面表示を省略できる」とされた。これによりケース販売は合理化されたが、1本単位のばら売りは依然として解禁されないままだった。
コンビニや自販機でラベルレス水を気軽に1本購入する——それが現実にならなかったのは、環境への意識や商品開発の問題ではなく、純粋に規制の問題だったのだ。
2026年7月30日の省令改正で何が変わったか
今回の省令改正の核心は、PETマークの表示方法の選択肢が増えたことだ。
旧制度(ばら売り時): ボトル側面に、ラベルまたは印刷でPETマークを表示すること
新制度(2026年7月30日施行): ボトルの底面または側面に刻印(凸版)でPETマークがあれば、ボトル側面のラベルや印刷を省略可能
さらに、食品表示基準が定める表示項目の文字サイズ規定が緩和された。これにより、表示項目の少ない水カテゴリの商品は、キャップ部分に全ての必要表示事項を印刷することが可能になった。
水は加工食品に比べて原材料名・添加物などの表示項目が少ないため、この緩和措置の恩恵を最も受けやすいカテゴリだ。コカ・コーラの「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」が自販機展開の「先陣」を切るのも、こうした背景がある。
また、販売経路の特性も関係している。自動販売機はJANコードの読み取りを必要としないため、ラベルのない商品でも管理・決済の仕組みが成立しやすい。店頭POS販売に先立ち、自販機が「最初の主要な販売経路」になる見通しだ。
コカ・コーラの10月展開——540mlのキャップに全情報が収まる
「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」は2020年4月に発売されたブランドで、これまではオンライン通販でのケース販売を中心に展開してきた。
今回、省令改正を受けて2026年10月から全国の自動販売機に順次展開する(540ml・希望小売価格180円税別)。ボトルの側面にラベルも印刷も持たない透明なボトルで、商品名・原材料名・採水地・製造者・賞味期限といった表示はキャップ部分に集約される。
消費者にとっての変化は明確だ。自販機でラベルレス水を購入した場合、ペットボトルを捨てるときにラベルを剥がす手間がかからない。分別のハードルが下がることで、外出先でのリサイクル行動がしやすくなる。

リサイクルの「ボトルtoボトル」とラベルレスの関係
公益財団法人PETボトルリサイクル推進協議会の統計によると、2024年度のPETボトルリサイクル率は85.1%(2023年度は85.0%)だ。同協議会はこの水準について「欧米と比較しても高い水準」と評価している。
ただし、リサイクル率の数字の中には「ラベルを剥がさずに捨てられてしまったボトル」から生じる品質劣化の問題が含まれている。ラベルのプラスチックは分別の際に取り除かれるが、外出先でラベルを剥がす人は少なく、家庭での徹底は限定的だ。
ラベルレスボトルは、ボトル本体のみが回収・選別されるため、不純物が混入しにくい。特に注目されているのが「ボトルtoボトル」(水平リサイクル)への貢献だ。使用済みPETボトルを溶かして新しいペットボトルの素材に戻すプロセスでは、ラベルやインクなどの不純物が少ないほど品質の高い再生材が得られる。
ラベルレス水を自販機で1本から購入できる仕組みは、消費者の行動変容を通じてリサイクルの質を底上げする可能性を持つ。
MIZUNOMOのデータベースで「い・ろ・は・す」を比較する
MIZUNOMOには、い・ろ・は・すの採水地別8バリエーションを掲載している。今回自販機に投入される「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」の採水地は現時点で非公表だが、い・ろ・は・すシリーズは北海道から鹿児島まで各採水地の地下水を使っており、採水地によって硬度・ミネラルバランスが異なるのが特徴だ。
代表的な採水地として、山梨県・白州の超軟水(硬度27mg/L)を掲載している。
熊本県・阿蘇カルデラの地下水を使った阿蘇採水バリエーションはカルシウムとマグネシウムの比率が他産地と異なり、硬度71mg/Lと相対的にミネラルが豊富だ。
自販機のラベルレス商品が具体的にどの採水地の水なのかは、今後の公式発表に注目したい。
ラベルレス市場の今後
今回のコカ・コーラの展開をきっかけに、他の飲料メーカーが追随するかどうかという市場の関心が高まっている。サントリー天然水・キリン 自然が磨いた天然水・アサヒ おいしい水 天然水などもラベルレス版をEC専用で展開しており、省令改正を受けた自販機・店頭単品販売への対応が今後の焦点となる。
店頭での1本販売(コンビニ・スーパーなど)については、JANコードの読み取りが伴うPOSシステムへの対応が別途必要なため、自販機より時間軸は後ろにずれる見通しだ。消費者調査では57.4%が「ラベルは不要」と回答しており(2025年調査)、規制の整備とともにラベルレス市場は拡大が続くとみられる。
※ 本記事で言及する「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」(540ml)は、MIZUNOMOが商品ページとして個別に掲載している採水地別バリエーションとは異なります。
参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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