コカ・コーラ「い・ろ・は・す もも」が史上初の色付き天然水に進化——2026年春リニューアルと8採水地の軟水科学

2026年3月30日、コカ・コーラシステムが「い・ろ・は・す もも」と「い・ろ・は・す シャインマスカット」をリニューアル発売しました。16年のブランド歴史で初めて液体に色がついた天然水として、水市場に静かな衝撃を与えています。
「天然水は透明なもの」という常識を崩した今回の変更。いったい何が変わり、なぜ今なのか。採水地の科学データとあわせて徹底解説します。
16年目で初めて「色が変わった日」
「い・ろ・は・す」は2009年の発売以来、軽量ボトルと全国8か所の採水地を武器に日本のミネラルウォーター市場をリードしてきました。しかし16年間、中身の液体は一貫して無色透明でした。
2026年春のリニューアルで変わったのは、まさにその「中身の色」です。
「い・ろ・は・す もも」は、山梨県産ももエキスを配合することで白濁した色合いに刷新されました。もも果汁のにごりをそのままイメージした見た目で、「手に取った瞬間から果実感が伝わる」設計です。「い・ろ・は・す シャインマスカット」も同時に新デザインにリニューアルし、ブランド全体に新たなコミュニケーションメッセージ「GOOD FOR みんな」を掲げました。
キャンペーン「い・ろ・は・す マイレージ」も同日スタート。購入本数に応じてデジタルポイントが貯まる仕組みで、繰り返し買う理由をつくっています。
白濁する天然水——山梨県産ももエキスの科学
フルーツエキスを天然水に混ぜると何が起きるのでしょうか。
果汁には水に溶けにくい脂溶性成分(フラボノイド、カロテノイド)が含まれており、水と均一に混ざらずに微細な粒子として漂います。この現象が「白濁」です。ももの果実らしい白みがかった色は、人工着色料ではなく果汁由来の自然な状態なのです。
一方、天然水の質は「フルーツエキスとの相性」に直接影響します。
ここで重要になるのが「軟水」の性質です。軟水(硬度120mg/L以下)はミネラル含有量が少ないぶん、果汁のデリケートな風味を邪魔せず引き立てます。硬水だとカルシウムやマグネシウムが多く、酸味・甘みと複雑に干渉して風味が濁ってしまうのです。
「い・ろ・は・す もも」の採水地は山梨県白州(南アルプス)。MIZUNOMOのデータベースによると硬度27mg/L・pH7.0の超軟水です。もも産地の山梨県と採水地が同じ山梨というのも、ブランドの一貫したストーリーになっています。
8採水地が生む「日本の軟水」の秘密
「い・ろ・は・す」の大きな特徴は、全国8か所それぞれの採水地で採れた天然水を使っていることです。MIZUNOMOのデータで各地の成分を比較してみましょう。
| 採水地 | 硬度(mg/L) | pH | カルシウム | マグネシウム |
|---|---|---|---|---|
| 白州(山梨) | 27 | 7.0 | 7.2mg/L | 2.3mg/L |
| 奥羽山脈(岩手) | 27 | 7.0 | 4.0mg/L | 4.0mg/L |
| 砺波(富山) | 27.7 | 7.0 | 8.3mg/L | 1.7mg/L |
| 北海道 | 31.8 | 7.0 | 6.8mg/L | 3.6mg/L |
| えびの(宮崎) | 33 | 7.0 | — | — |
| 大山(鳥取) | 40.3 | 7.0 | 7.1mg/L | 5.5mg/L |
| 富士山麓(静岡) | 41 | 7.0 | 11.0mg/L | 3.2mg/L |
| 阿蘇(熊本) | 71.1 | 7.0 | 12.0mg/L | 10.0mg/L |
最も軟らかいのが白州・奥羽山脈の硬度27mg/L、最も硬いのが阿蘇の71.1mg/L。それでも国際的な軟水基準(120mg/L以下)を大きく下回り、全採水地が「軟水」に分類されます。
なぜ日本の天然水はこれほど軟らかいのか。理由は地質にあります。日本列島の多くは花崗岩・安山岩などの火成岩が基盤岩です。これらはカルシウムやマグネシウムをほとんど含まない鉱物で構成されているため、雨水が地下に浸透しても硬度ミネラルがほぼ溶け込みません。加えて急峻な地形が「水が地中に留まる時間」を短くし、ミネラルの溶出をさらに抑えています。
阿蘇だけ硬度71.1mg/Lと高めなのは、活火山由来の火山性鉱物層が地中に多く含まれるからです。カルシウム12mg/L・マグネシウム10mg/Lという他の採水地より高いミネラル含有量が、少しだけしっかりした口当たりをつくります。

「GOOD FOR みんな」が意味するもの
新ブランドメッセージ「GOOD FOR みんな」は、環境・健康・地域の3軸を表現しています。
い・ろ・は・すは2009年の発売当初から軽量ボトルを採用し、原材料(ペット樹脂)の使用量削減を推進してきました。その路線をさらに進める形で、2026年版ではボトルの薄さや飲みやすいキャップ形状も改良されています。
「みんな」という言葉が指すのは消費者だけではありません。採水地の地域コミュニティ、そして地球環境も含んだ「ステークホルダー全員にとって良い水を」というメッセージです。
数字で見ると、日本のミネラルウォーター市場は2025年に販売金額5,057億円と初の5,000億円突破を達成(日本ミネラルウォーター協会)。一方で生産量は6年ぶりに前年比減少に転じました。「量ではなく価値で選ばれる水」へのシフトが鮮明で、い・ろ・は・すの「色付き化」もその流れの一環です。
2026年夏、フレーバー天然水が主役になる理由
タイミングとしても、今回のリニューアルは的確です。
日本気象協会の長期予測によると、2026年の夏は平年を上回る高温が予想されています。6月から早々に猛暑日が増え始め、7月以降は北陸・関東から沖縄にかけて「厳重警戒」ランクが続く見込みです。
猛暑になると水の消費量は急増します。しかし毎日「ただの水」を大量に飲み続けるのは気分的に単調。そこでフレーバーウォーターの需要が高まるのです。
砂糖ゼロ・無果汁の清涼飲料水ではなく、「天然水にほんのり果実の香りと色」というポジションは、健康意識の高い20〜40代女性に特に響きます。ビタミン補給や機能性を前面に出したドリンクではなく、「体に余計なものを入れず、それでいて飽きない水」というニーズに応えているのです。
今夏の水分補給シーンを想像すると——
- 仕事中のデスク、透明水より「白濁したもも色」の方が目に楽しい
- スポーツ後に「甘くなく、でも香りがある水」として選ばれる
- 熱中症対策でこまめに飲む際に、フレーバーが「飲み忘れ防止」になる
日本コカ・コーラが「GOOD FOR みんな」に込めたのは、こうした生活の小さな心地よさを積み重ねる思想なのかもしれません。

MIZUNOMOで8採水地を比べてみよう
い・ろ・は・すの8つの採水地は、MIZUNOMOのデータベースでそれぞれ個別に登録されています。北海道の清らかな軟水(硬度31.8mg/L)から、阿蘇の火山性ミネラルを含む軟水(硬度71.1mg/L)まで、「同じブランドなのに成分が違う」というおもしろさがあります。
フレーバー版はもちろん、プレーン版のい・ろ・は・すも採水地によって微妙に味が異なります。「いつも飲んでいるあのい・ろ・は・す、採水地はどこ?」——ボトル側面のラベルで確認できますので、次に手に取ったときはぜひ産地をチェックしてみてください。
今年の夏、色付き天然水というジャンルがどこまで市場を動かすか。MIZUNOMO編集部は引き続き注目していきます。
参考情報
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
プロフィール: iihito.jp ↗
