ミネラルウォーター市場が初の5000億円突破!販売額と生産量の"逆転現象"を読み解く

日本ミネラルウォーター協会が2025年統計を発表
2026年3月30日、一般社団法人日本ミネラルウォーター協会が2025年のミネラルウォーター類統計を発表しました。年間販売金額は合計5,057億円(前年比103.1%)と、史上初めて5,000億円の大台を突破。一方で、生産量は498万キロリットル(前年比96.7%)と6年ぶりの減少に転じました。
販売額は過去最高を更新したのに、生産量は減っている――この一見矛盾する"逆転現象"の背景には、私たちの水との付き合い方の変化が見えてきます。
5,057億円の内訳を科学的に分析

国内生産と輸入の構成比
2025年のミネラルウォーター類の販売金額の内訳は以下の通りです。
- 国内生産: 4,954億1,400万円(前年比103.3%)
- 輸入: 103億2,100万円(前年比92.8%)
国内生産が全体の約98%を占めており、日本のミネラルウォーター市場は国産ブランドが圧倒的な強さを持っています。「サントリー天然水」と「い・ろ・は・す」の2強体制が市場を牽引しており、南アルプスや奥大山といった日本各地の採水地から届く軟水(硬度20〜60mg/L程度)が、日本人の味覚に合致していることがこの数字に表れています。
生産量が6年ぶりに減少した理由
生産量の内訳を見てみましょう。
- 国内生産量: 486万1,884キロリットル(前年比96.7%)
- 輸入量: 11万8,924キロリットル(前年比96.1%)
- 合計: 498万808キロリットル(前年比96.7%)
6年ぶりの減少、つまりコロナ禍の2020年以来の前年割れとなりました。主な要因として挙げられているのが、複数の大手メーカーによる製品値上げです。原材料費や物流コストの上昇を受けた価格改定が、一定の買い控えにつながったと分析されています。
ただし、プライベートブランド(PB)製品を含めた市場全体の国内生産数量は引き続き伸長しているとみられ、消費者がNB(ナショナルブランド)からPBへシフトする動きも読み取れます。
10年で1.5倍に成長した市場の背景

なぜ日本人は水を買うようになったのか
2025年の498万キロリットルという生産量は、10年前の2015年(339万キロリットル)と比較して約1.5倍。1人あたりの年間消費量は約40.4リットル(前年比96.9%)で、過去2番目の高水準です。500mlペットボトルに換算すると、1人あたり年間約80本を消費している計算になります。
この10年間の成長を支えた3つの要因があります。
1. 猛暑の常態化と水分補給意識の向上
近年の記録的猛暑が水の需要を押し上げています。2025年の東京の真夏日は87日に達し、「水分補給=ペットボトル水」という行動が定着しました。厚生労働省のガイドラインでも1日1.2リットルの水分補給が推奨されており、科学的な裏付けが消費者の行動変容を促しています。
2. 災害備蓄需要の拡大
2011年の東日本大震災を機に、家庭での飲料水備蓄が一般化しました。農林水産省は1人あたり3日分(9リットル)の備蓄を推奨しており、2Lペットボトルの箱買い需要が市場を下支えしています。
3. 健康志向と水質への関心の高まり
「何を飲むか」だけでなく「どんな水を飲むか」への関心が高まっています。硬度やpH値、含有ミネラル(カルシウム、マグネシウム、バナジウム、シリカなど)を比較して選ぶ消費者が増えており、2023年の国民健康・栄養調査でも成人のカルシウム摂取量は推奨量の約60〜70%にとどまることが報告されています。ミネラルウォーターによるミネラル補給への期待が、市場成長の一因となっています。
2026年の注目トレンド
環境配慮型パッケージの進化
市場成長とともに注目されているのが、環境負荷低減の取り組みです。サントリーの2Lペットボトルは2000年比で重量を約半減させ、植物由来素材30%を導入。化石由来原料を1本あたり60%以上削減しています。ボトル重量はわずか29.8gと、国産2Lペットボトルで最軽量クラスを実現しています。
また、アサヒ飲料は2026年3月時点で横須賀市をはじめ全国の自治体と「ボトルtoボトル」協定を次々と締結し、使用済みペットボトルを新しいペットボトルに再生する水平リサイクルを推進中。2024年時点でリサイクルPET使用率36%を達成し、2030年に100%を目標に掲げています。
「水を選ぶ時代」の到来
販売額5,000億円突破は、ミネラルウォーターが「とりあえず買う水」から「選んで買う水」へと進化した証でもあります。硬度27mg/Lの超軟水から1,468mg/Lの超硬水まで、pH6.7〜8.0以上まで、市販されている水の多様性は驚くほど広がっています。
まとめ:数字が語る「水の価値」の変化
ミネラルウォーター市場が5,000億円を突破した背景には、単なる飲料としてではなく、健康・防災・環境という3つの軸で水の価値が再評価されている現実があります。生産量の減少と販売額の増加という"逆転現象"は、消費者が「安い水」よりも「価値ある水」を求め始めていることを示唆しています。
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監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
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