天然水を凍らせると何が起きる? サントリー冷凍PET誕生の科学とGWの保冷・防災活用法

2026年4月1日、サントリー食品インターナショナルが「サントリー天然水 冷凍PET(500ml)」を全国発売しました。ペットボトル入り天然水を「そのまま凍らせられる」という、これまでありそうでなかった商品です。猛暑が続く日本でミネラルウォーターを保冷剤代わりに使いたいというニーズに応えたものですが、気になるのは「凍らせた天然水は、ミネラル成分が変わってしまわないのか?」という科学的な疑問。今回は、その謎を「凍結濃縮(freeze concentration)」という現象から解き明かします。
なぜ今、「凍らせた天然水」が求められるのか
同社によると、カスタマーセンターへの「サントリー天然水を凍らせていいか」という問い合わせが、2019年比で約2倍に増加していたといいます。背景には、記録的な猛暑が続く日本の気候変動があります。環境省の「熱中症警戒アラート」は2026年4月22日から春の運用を開始しており、GW期間中も25℃超えが予想される地域が多数あります。
ただし、一般的なペットボトルは「冷凍非対応」です。理由はシンプルで、水は凍ると体積が約9%膨張するため、通常の容器では変形・破損・液漏れが生じます。サントリー天然水 冷凍PETは、この膨張に対応した専用設計の容器を採用することで、家庭の冷凍庫で安全に凍らせられるようにしたのです。
ボトルは「立てた状態で凍らせる」ことが推奨されており、冷気の吹き出し口(冷凍庫の背面・天面)から離して置くと均一に凍ります。デザインにも雪山のシルエットが取り入れられ、冷涼感を視覚的にも演出しています。
水を凍らせると何が起きる? 「凍結濃縮」の物理化学
ここからが今回の科学的本題。「天然水を凍らせたら、ミネラルはどこへ行くのか?」という問いです。

氷の結晶はほぼ純粋な水
水が凍るとき、水分子(H₂O)は六角形の格子構造(氷Ih型)を形成します。このとき、カルシウム(Ca²⁺)、マグネシウム(Mg²⁺)、ナトリウム(Na⁺)といったミネラルイオンは、その大きさと電荷の影響でこの格子構造に入り込めません。
結果として、ミネラルは凍らずに残った未凍結水の部分に押し出され、そこに濃縮されるという現象が起きます。これを「凍結濃縮(freeze concentration)」と呼びます。ゆっくりと凍らせると最初に純度の高い氷が形成され、最後に凍る中心部にミネラルが集中します。
凍結濃縮は食品産業でも活用される技術です。アイスワインのりんごジュース濃縮や、清酒の「どぶ漬け法」など、同じ原理が応用されています。天然水の場合、解凍後には元の濃度に均質化されるため、飲料としての成分は変わりません。
白く濁る謎を解く
硬度の高い天然水を凍らせると、氷が白く濁ることがあります。これはミネラル——主に炭酸カルシウム(CaCO₃)——が析出したためです。品質や安全性には全く問題ありません。
白く濁ることは「ミネラルが豊富である証拠」と言えます。参考として、各ブランドの硬度と凍結時の変化の目安をまとめました。
| ブランド名 | 硬度(目安) | 凍らせたときの白濁 |
|---|---|---|
| サントリー天然水(南アルプス) | 約30 mg/L | ほぼ白濁なし |
| い・ろ・は・す(採水地平均) | 約30〜71 mg/L | ほぼ白濁なし |
| 南アルプスの天然水(アサヒ) | 約30 mg/L | ほぼ白濁なし |
| エビアン | 約291 mg/L | やや白濁 |
| コントレックス | 約1,468 mg/L | 白濁しやすい |
サントリー天然水は硬度約30 mg/Lの軟水のため白濁は起きにくく、冷凍PET商品として使う水源として理に適っています。
解凍後の水は「おいしくなる」のか?
「凍った水をゆっくり解かすとおいしく感じる」という声があります。科学的な背景のひとつは、解凍によって溶存気体(酸素・窒素)が抜け、すっきりとした口当たりになる点です。また、溶け始めの水は純度が高く、マイルドな舌触りになります。
ただし完全に解けると成分は元に戻るため、劇的な変化ではありません。むしろ重要なのは「十分に冷えた状態で飲める」こと——飲料の温度は風味の知覚に大きく影響し、4〜8℃付近で天然水の甘みや清涼感が最も引き立つとされています。
サントリー天然水 冷凍PETの3つの活用シーン

1. 外出時の「飲める保冷剤」として
スポーツバッグやランチボックスに入れれば、市販の保冷剤と違い、解凍後にそのまま飲める点が最大のメリットです。GWのアウトドア、子どもの運動会、長時間の移動など、冷たい飲み物が必要なシーンで力を発揮します。ゆっくりと解けていく過程で継続的に冷気を発するため、保冷効果が長続きするのも特徴です。
2. 身体を外から冷やす「アイスパック」として
熱中症応急処置では「首・脇の下・鼠径部(脚の付け根)を冷やすことが有効」とされています。凍ったボトルをタオルで包み、これらの部位に当てると体温を効果的に下げることができます。
注意点:凍ったボトルを直接素肌に長時間当て続けると凍傷(frostbite)のリスクがあります。必ずタオルや布を介して使用し、一箇所への当て過ぎを避けてください。
3. 防災備蓄の「一石二鳥ストック」として
停電時、冷凍庫内のアイテムが満たされているほど庫内温度が下がりにくく、保冷効果が持続します。環境省も「冷凍庫の余裕スペースに水を入れておくと停電時の保冷に役立つ」と推奨しています。
従来の天然水は冷凍非対応のため、備蓄目的での冷凍庫利用ができませんでした。冷凍PETを使えば普段は保冷剤として機能し、緊急時には飲料水として活用できるという二重の役割を担います。断水・停電リスクが高まる昨今、防災意識の高い人にこそ注目してほしい使い方です。
MIZUNOMO視点:凍らせる天然水の選び方
凍結濃縮の観点から、軟水(硬度60 mg/L以下)ほど白濁せず均一に凍る傾向があります。日本の天然水は地質的に軟水が多く(日本の平均硬度は約50〜60 mg/L)、冷凍との親和性が高いと言えます。
一方でヨーロッパの硬水(エビアン・コントレックスなど)は、解凍後に白い沈殿が残ることがありますが、これは品質劣化ではなく、単なる炭酸カルシウムの析出です。ボトルを振れば再び溶け込みます。
MIZUNOMOデータベースでは、40種以上の天然水の硬度・pH・主要ミネラル成分を掲載しています。「どの水を凍らせるか」を考える際の参考データとして、ぜひご活用ください。
まとめ
サントリー天然水 冷凍PETは、「飲む」だけだったミネラルウォーターの可能性を広げた商品です。水を凍らせると起きる「凍結濃縮」のメカニズム、白濁の正体、解凍後の味わいの変化を理解することで、天然水をより科学的に使いこなせるようになります。
GW前のこの時期、保冷剤・身体冷却・防災備蓄の三役を担う凍らせた天然水を、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
参考リンク
監修・運営: 水野亮人(みずの りょうと)
プロフィール: iihito.jp ↗



